だしを知るには素材から。旨みの宝庫であるその種類と用途を簡単解説

だしとは、天然の調味料です。

色々な素材を煮出すことでその素材の持つ“旨み”を取りだしたものです。和食、洋食、中華と欠かすことのできない調味料のベースです。

その旨み成分はイノシン酸、グルタミン酸、グアニル酸、コハク酸などがあり、身近なお料理もこの素材の持つ旨みの組み合わせと醤油、味噌、砂糖、塩、酒などの基本調味料を使い、“味”が完成できる非常に重要なものです。

この記事は、だしを知り、だし取りができ、だしを身近なものにすることができます。海外のだしの種類もご紹介しながら、これさえ覚えれば困らない日本を代表する3つのだしの取り方から、簡単・便利なおすすめのだし用品についてもお話ししていきますので是非活用くださいませ。

調味料といえば化学調味料も同じものとお思いの方、“だしの力”を改めて確認できる記事です。


1.「だし」とは

だしはお料理の基本となる味に旨みを加える為の力があり、まさに天然の調味料なんです。

 

その旨み成分は鰹節のイノシン酸、昆布のグルタミン酸、椎茸のグアニル酸といわれるもの、野菜類にも含まれるグルタミン酸です。これらの成分を合わせることで更に旨みが増すことにつながります。

我々の身近にある素材には非常に優れた成分があります。日本でも海外でもだしはお料理に欠かせないものになっています。

山形のだし
ここで「だし」といわれるものに山形のだしがあります。山形県の郷土料理にある「だし」です。それは、夏野菜を使った薬味的な発想から生まれたお料理です。この記事は汁ものの“だし”についてお話ししていきます。


2.代表的なだしの種類とその旨み

先ずは、日本のだしと海外のだしを比べてみますと、日本で代表されるだしと言えば鰹節のだし、昆布のだしである和風だしです。海外では、フランスのフォンと中国の湯(タン)があり、牛骨、鶏ガラ、魚のあらなどを野菜と煮込んだものが主流です。

このように、だしの種類には素材別に動物系(水産系)、植物系と大きく分けられます。それぞれに旨み成分は違いがあります。

2-1 日本のだし

日本を代表するだしの種類とその旨み成分

日本のだし、和風だしの仲間ですが中でも一般的にご家庭で使われるだしは鰹節、昆布、煮干しになります。

>>旨み成分の詳細はこちらへ

うま味倍増!イノシン酸・グルタミン酸・グアニル酸の相乗効果と食材

①鰹節のだし

花かつお用の原料:鰹荒節(かつおあらぶし) 

かつおだしはお料理には欠かせない最も代表的なものであり、日本では欠かすことができない出汁です。香り、うまみは誰もが認めるもので万能だしです。旨み成分はイノシン酸です。最も相性がいいお料理はすまし汁(お吸い物)やお味噌汁、特に豆腐とわかめのようなあっさり具材で香りをお楽しみいただける汁ものお料理です。

また、このかつおだしですが花かつおとかつお厚削りを使った出汁があります。こちらも用途による使い分けをすることがおすすめです。かつお厚削りは濃いめの出汁を取る場合に使います。それは煮出し時間も長めになり、しっかりと旨み成分が取れるからです。そばつゆ、うどんつゆのだしにはおすすめです。

②昆布だし

原料は干し昆布です。羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布、真昆布がよく知られています。北海道の道北、道東、道南の地域で分けられ、それぞれに特徴があります。

昆布だしは香りを味わうと言うより、隠し味的にご利用されます。旨み成分はグルタミン酸であり、お料理にコクを出すことができます。このグルタミン酸はかつおだしのイノシン酸と合わさることで強い旨みが生まれます。炊き込みごはん、煮物、おでんなどにおすすめです。

③鰹節と昆布の合せだし

このだしはかつおだしとこんぶだしの旨み成分が合わさることで生まれる相乗効果により、強い旨みのだしになります。先にご説明しましたが旨み成分はイノシン酸とグルタミン酸です。こちらもすまし汁(お吸い物)、お味噌汁など、汁ものお料理におすすめです。かつおだしと同じく、煮物、麺類のつゆにも幅広くお使いいただける出汁です。

>>合わせだし詳細はこちらへ

うま味倍増、どんな料理にもあう合わせだしの簡単な取り方

④煮干しのだし

煮干しはかたくちいわしです。市販されている袋詰めの煮干しでだし取りができます。お味噌用のだしとして人気が高いです。地方では“いりこだし”といわれることもあります。今ではラーメンスープにも使われていて独特のスープに仕上げる為には欠かせないものとして定着しています。旨み成分はイノシン酸です。

⑤椎茸だし

干し椎茸を使った出汁で非常に特徴のある出汁です。独特の風味と味わいがあります。そうめんつゆにはよく使われることで知られています。種類も大きく分ければ、冬菇(どんこ)、香信(こうしん)があります。お値段的には高価な“どんこ”、比較的安い“こうしん”があります、出汁的には“こうしん”で十分です。旨み成分はグアニル酸ですが、この成分は生しいたけにはほとんど含まれません。しいたけを干すことで成分が凝縮して生まれるものです。

⑥あごだし

あご出汁の素材はトビウオです。このトビウオを焼き上げた、“焼きあご”がブームになっています。長崎県が有名ですが、他にも鹿児島県、鳥取県、新潟県も水揚げがあります。比較的あっさり系ですがコクがあります。それは、旨み成分がイノシン酸とグルタミン酸が含まれているからです。ラーメン、おでんなど、うどん出汁、そば出汁のように汁の多い料理に使われます。

⑦野菜だし

その名前の通り、野菜から取り出した出汁です。野菜に含まれる旨み成分はグルタミン酸です。大根、キャベツ、玉ねぎ、人参、セロリなど普段お料理に使う野菜の切れ端、皮、芯を使った健康志向を代表する出汁です。野菜の持つ栄養素にそれぞれ違いがありますので、たくさんの種類を使うことがおすすめです。

水産系のお出汁の栄養ももちろんですが、特徴が味、旨みとするなら、野菜出汁は栄養摂取を目的とした出汁です。

⑧精進だし

動物系の素材を使わない精進料理用の出汁です。干し椎茸、昆布、干瓢、大豆などを使った出汁で、旨み成分はグルタミン酸と椎茸のグアニル酸です。素材の味を活かしたお料理、野菜の煮物など、汁ものに使われます。

このように、皆さんが目にする当たり前の食材には旨み成分があり、出汁として取り出すことができます。

2-2 海外のだし

海外のだしは代表されるフランスのフォン中国の湯(タン)です。こちらも動物系と植物系に分けられ、長時間煮込んだものから煮出した汁まで素材により取り方に違いがあります。旨み成分も日本のだしと同じように取ることができます。

海外を代表するだしの種類とその旨み成分

①フォン

フォンとはフレンチでよく使われるソースのベースになるだしです。動物系の素材から長時間煮込んで取った出汁です。旨み成分は動物系からでるイノシン酸と植物系からのグルタミン酸になります。

●フォン・ド・ヴォー

 

仔牛から取った出汁で濃厚さが出ます。

●フォン・ド・ヴォライユ

 

鶏ガラから取った出汁で、あっさり系ではありますがコクがあり、汎用性のある出汁です。

●フュメド・ポワゾン

 

から取った出汁です。白身の魚の出汁で、ソース、スープにと汎用性があります。

②湯(タン)

湯(タン)は中国料理のスープの総称です。お料理に使われるベースのスープです。動物系から取った出汁を葷湯(ホウンタン)、植物系から取った出汁を素湯(スウタン)と言います。

旨み成分はイノシン酸、グルタミン酸になります。鶏肉、豚肉、野菜の他、えび、あわび等も使われます。

このように日本のだし、海外のだしの旨み成分はイノシン酸、グルタミン酸がベースになり、味に深みを加える重要な役割があり、天然調味料と言われる理由です。その他にも貝類に含まれるコハク酸があり、あさりの味噌汁で感じる旨み、独特の味わいがコハク酸です。


3.だしの取り方4選

日本のだし4選のだし取りをご紹介します。一般のご家庭でだし取りをする場合、この4種類さえ覚えておけばお料理に使うだしに困ることはありません。

中でも普段使いは、かつおだし、昆布だし、煮干しだしの3種類の取り方がわかれば十分ですのでご安心ください。

3-1 かつおだしの取り方

一番のおすすめ料理はすまし汁(お吸い物)やお味噌汁、特に豆腐とわかめのようなあっさり具材で香りをお楽しみいただける汁ものお料理です。麺類のつゆにも最適で、香りを味わうお料理など、うどんやそばのつゆにも欠かせません。

【材料】

  • 水1000cc
  • 花かつお40g
  • 濾し分けるザル、又はキッチンペーパー

  • 水1000ccを火にかけ、沸騰させます。

  • 用意した花かつお40gを沸騰している鍋にいれます。

 この時、菜ばしなどで湯の中に浸すようにしてください。

  • 花かつおを入れますと沸騰がおさまります。再び沸騰してきますので、そのタイミングで火を止めます。

 火を止めてから1分程静止させ、そのあと濾し分けてください。

  • だしガラとだし汁を濾し分けてください。

  • かつおだしの完成です。

3-2 昆布だしの取り方

昆布だしのおすすめは炊き込みごはん、煮物、おでん、鍋ものなどです。

前日から下準備をする場合と、直前の時短でできる方法があり、時短方法をご紹介します。この方法でも十分昆布だしを味わえます。昆布は市販されている日高昆布でご紹介します。

【材料】

  • 水1000cc
  • 昆布20g程

  • 1000ccの水を鍋に入れます。
  • 用意した昆布を鍋に入れてから火をかけます。

 水の量に対して2%程の昆布です。

  • 沸騰直前に昆布を取り出してください。

 3分程で沸騰しますので、この間は目を離さないようにしてください。

濾す必要はありません。菜ばしで昆布を取り出せば完成です。

  • 昆布だしの完成です。

沸騰してからもグツグツと煮立たせないことが重要です。煮立たせてしまいますと昆布のえぐみが出てしまいます。

>>昆布だしの取り方詳細はこちらへ

[実用版]時短・簡単・美味しい「昆布だし」取り方及びその活用法

3-3 煮干しだしの取り方

【材料】

  • 水1000cc
  • 頭と内臓を取り出したもの30g
  • 濾し分けるザル、又はキッチンペーパー
  • 水1000ccを入れた鍋に煮干し30gを入れます。

  • 30分程浸しておきます。

 事前に浸しておき、だしを出やすくします。

  • 30分立ちましたら火をかけ、沸騰前に火力調整し、微沸騰で約10分煮出してください。

 3分程度で沸騰しますので、沸騰した後は火力調整してください。

  • 火を止め、煮干しを取り分けてください。

 出汁を受ける容器を準備し、火を止めてから速やかに濾し分けてください。

●煮干しだしの完成です。

3-4 椎茸だしの取り方

椎茸だしは簡単です。水に浸すだけでだしが取れます。

干ししいたけのうま味は10℃を超えてくると破壊され始めてしまうので、冷蔵庫で冷やしながら抽出したら完成です。

常温で抽出したり、早くだしを取ろうと煮出したりしてもおいしいだしは取れません。必ず冷蔵庫で冷やしながら抽出します。

【材料】

  • 水1000cc
  • 干し椎茸30g
  • 浸す為のボールか容器
  • 水1000ccを鍋かステンレスボール、又はタッパーに水を入れます。

できればふたができるタッパーがおすすめです。ボール使用ならラップを掛けでもよいです。

  • 干し椎茸を水洗いして、汚れを落としてください。
  • 洗った椎茸を水1000ccに浸してください。

この状態でふたをして冷蔵庫で10時間から12時間は最低でも浸してください。

  • 椎茸を取り出してください。

 キッチペーパーや、ザルを使い、濾し分けてください。

  • 椎茸だしの完成です。

もうひと手間です。こちらを鍋に移し、一旦沸騰させてすぐに火を止め、アク取りし完成です。

ひと口メモ
せっかく取っただしが残ってしまうこともあります。そんな時の保存方法も簡単です。タッパー、ピッチャーなどふた付容器に入れ、冷蔵庫で保存してください。2日~3日程保存可能です。

冷凍保存であれば1ケ月程は大丈夫です。残った量にもよりますが、厚めのチャック袋に入れたら凍結し易くする為、袋を横にして(寝かせた状態)で冷凍庫に入れてください。


4.だし代用品の商品紹介

おすすめは出汁パックです。この商品は風味原料の素材を複数使用して、調味料を配合することで味付けが完成されている出汁とお考えください。

その他に、お醤油や魚介エキスなどを使用したものもあり、煮出すだけでおいしいだしができる為おすすめの理由です。「時間がない! 簡単にだし取りがしたい!」そんな方には大変便利な商品です。

私たち鰹節のプロがお試しいただきたい6種類をご紹介します。各メーカー様により素材の配合割合には違いがあります。鰹節、さば節、煮干しいわし、焼きあごなどをどれくらいの量で配合するかでだしの傾向の違いがあります。

化学調味料は絶妙なバランスで使われ、だしの味は各社深みのある商品として幅広い層に受け入れられる万能型のおだしであり、是非お試しいただきたい理由です。

4-1 鰹ふりだし

5種類の国産風味原料を使用し、下味をつけたタイプで万能型のだしです。素材のこだわりは産地を厳選した人気の商品です。

三幸産業 鰹ふりだしを見る

4-2 あご入り鰹ふりだし

◆鳥取県産のあごも使用し、産地の素材を強調しながら、鰹節、他素材をブレンドした商品で幅広い用途があります。

商品一覧 > あご入り鰹ふりだし

4-3 焼きあご入り だし取り職人

◆焼きあごの他、風味原料の素材にもこだわりとほんのりと醤油の香りが立つ、醤油メーカー様ならではの仕上がりの商品です。

だし取り職人お徳用(10g×30袋) – ユタカフーズ

4-4 あご入り 兵四郎だし

◆福岡県のメーカーで、焼きあごをはじめ、さば節、鰹節、いわし煮干し、昆布、椎茸と基本素材をブレンドした万能型のタイプです。

味の兵四郎(ひょうしろう)公式通販サイト

4-5 和風だし千代の一番ゴールド(減塩)

◆風味原料も豊富に使い、調味料も絶妙なバランスで仕上げた商品です。アイテムも豊富なメーカー様で、鰹節へのこだわりが強く、通販でも人気があります。

株式会社千代の一番

4-6 茅乃舎無添加だし

◆福岡園の醤油メーカー様の商品で、九州ではなじみのあるあ「あご」を使い、基本のだし素材である、鰹節、さば節、いわし煮干し、昆布、椎茸、食塩で仕上げた無添加タイプです。

茅乃舎だし|茅乃舎|久原本家通販サイト

このように出汁パックは簡単・便利を追求しながらも素材の持ち味も余すことなく発揮できるように、各社こだわりの素材吟味により完成されたものです。だし取り以外でもふりかけ用の調味料としての用途もあり、一般家庭で人気が高い理由です。

ここまで素材には旨み成分が含まれているとお話ししましたように、お料理にはだしが不可欠とも言えます。甘味、塩味、辛味、渋味に加え、旨味がなければなりません。だしはまさに基本になる調味料です。

このような旨み成分を私たち先人は色々な素材から発見し、現代につなげてくださいました。


5.だしの歴史

現在では当たり前の「かつおだし」、「昆布だし」ですがその歴史は古く、かつおだしの前身は室町時代の後半に登場したと言われていています。

日本の歴史上、料理本に登場する「にたし」という鰹節を使った煮出した汁のことが書かれていて最も古い書とされています。この時代既に料理に使う調味料になるとその旨みに気づかれたわけです。その後、江戸時代初期の料理書、今ならレシピ集になるような文献が登場し、現在の「だし」という意味の言葉で語られるようになったといわれています。

同じくして昆布も精進料理のだしとして使用されていたことが紹介されています。まさに調味料の起源であったことがうかがえます。この時代になれば、海の幸、山の幸、野の幸を使った素材が定着し始め、塩、味噌、醤油、酒、酢などの調味料に加えて味を作り出す「だし」に繋がっています。

この旨みは先人たちの発見によるもので、現在の日本料理に大きな影響を与えてくださいました。和食が無形文化遺産に登録され、食文化を変えただしの力と考えます。

※第17回 日本のだし文化とうま味の発見 引用


6.まとめ

“だし”とは非常に奥深いものであると改めて実感いただけましたでしょうか。

だしの種類もたくさんあり、和食、洋食、中華料理など、料理の基本になる調味料として欠かせない旨み成分を含んだ優れものです。日本を代表する4種類のだし取り方法、簡単、便利なだし代用品の出汁パックをご紹介してきました。

この記事をきっかけにお料理への関心が深まり、だしを身近なものにしていただけると思います。

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