干し椎茸は生椎茸と比べてどんな栄養があるか知っていますか?
干し椎茸について書かれた様々なサイトでよく
「干し椎茸の栄養は全て生椎茸より優れている!」
と書かれているのを見かけます。
こういったサイトに載っている数値は、
可食部100gあたりの栄養成分を比較したものがほとんどです。
生椎茸の約90%は水分であり、乾燥させて水分が抜けた干し椎茸は栄養が凝縮されて
100gあたりの栄養が増えるのは当たり前ですよね。
しかし!そんな中で実際に干し椎茸にすることで劇的に増える栄養もあります!
・ビタミンD
・葉酸
・ビオチン
というような栄養成分が、生の椎茸よりもたくさん含まれています。
そして干し椎茸の特有の香り成分であるレンチオニンや、
干し椎茸以外にはほとんど含まれていない旨み成分グアニル酸
これらの二つの栄養成分は血小板が凝集するのを防いでくれる働きがあり、
心筋梗塞や脳梗塞といった血栓症の予防も期待できます。
この記事では干し椎茸に含まれている栄養を生の椎茸と
1本あたりの量で比べながら、解説をしていきます。
また豊富な栄養を逃がさずに楽しむ為の3つの方法をお伝えします。
1.1本あたりの栄養を生椎茸と比較してみた
生の椎茸と干し椎茸に含まれている栄養には、
どんな違いがあるか確かめたいのですが、
今回は、「凝縮」による栄養の優劣ではなく干し椎茸ならではの栄養成分に着目したいので
普通サイズの生椎茸1本(約20g)と干し椎茸1本(約2g)
この2種類の栄養を比較してみました。
1-1.エネルギーや三大栄養素に違いはない
| 生椎茸(20g) | 干し椎茸(2g) |
エネルギー | 4.4kcal | 5.16kcal |
水分 | 18.3g | 0.18g |
たんぱく質 | 0.5g | 0.42g |
脂質 | 0.08g | 0.06g |
炭水化物 | 1.0g | 1.25g |
(食品成分データベースより参照)
生の椎茸は水分を多く含んでおりますが、干し椎茸は乾燥させることで、1本あたりの水分量が
10分の1程の量になっています。つまり1本あたりの栄養成分はギュッと凝縮されます。
1本あたりの栄養価はほとんど変わらないのに、
生椎茸は約5本で100g
対する干し椎茸は約50本で100g
だから栄養成分表100gあたりで見比べて乾燥椎茸の栄養成分の方が多いのは当たり前です。
ただし個体差がありますので、乾燥前後の数値は一致しないことがあります。
1-2.ミネラルにもほとんど違いはない
| 生椎茸(20g) | 干し椎茸(2g) |
ナトリウム | 0.2mg | 0.28mg |
カリウム | 40.0mg | 44.0mg |
カルシウム | 0.2mg | 0.24mg |
マグネシウム | 2.2mg | 2.0mg |
リン | 13.0mg | 5.8mg |
鉄 | 0.06mg | 0.06mg |
亜鉛 | 0.16mg | 0.05mg |
銅 | 0.01mg | 0.01mg |
マンガン | 0.03mg | 0.02mg |
ヨウ素 | -(※) | 0.08μg |
セレン | -(※) | 0.1μg |
クロム | -(※) | 0.1μg |
モリブデン | -(※) | 0.06μg |
(食品成分データベースより参照)
※ -表示の物はゼロではないが、ほとんど入っていないと思われるので分析していません。
あまり生と干しで変化はありませんね。
ミネラルに関しては、大きな違いはありませんでしたが、
どちらも体内の余分な塩分を排出してくれるカリウムを多く含むので、
血圧の低下効果が期待できますね。
1-3.一部を除きビタミン群にも変化なし
| 生椎茸(20g) | 干し椎茸(2g) |
ビタミンB1 | 0.02mg | 0.01mg |
ビタミンB2 | 0.02mg | 0.03mg |
ナイアシン | 0.4mg | 0.38mg |
ビタミンB6 | 0.02mg | 0.01mg |
パントテン酸 | 0.14mg | 0.18mg |
ビタミンC | 0mg | 0.4mg |
(食品成分データベースより参照)
ビタミン群に関しても、ほとんど変化が見られませんね。
生椎茸にはなかったビタミンCが含まれていますが、
本当にごく僅かな量なので、ビタミンC目当てで干し椎茸を食べる意味はありませんね。
あれ?ほとんど違いがないじゃないか!
と思われた方がいらっしゃると思います。
安心してください。ちゃんと干し椎茸が優れている栄養もございます。
それらの栄養について次章で解説いたします!
2.干し椎茸が優れている5つの栄養素!
先程の章では、あまり生椎茸と干し椎茸の違いがありませんでしたね。
しかし干し椎茸には生椎茸と比較して優れている栄養素があります!
・ビタミンD
・葉酸
・ビオチン
・レンチオニン
・グアニル酸
これら5つの栄養で生椎茸よりも優れています!
とりわけ下2つの成分は、ほとんど干し椎茸にしか含まれていない栄養です!
2-1.太陽の力で増加!骨を丈夫にするビタミンD
まず生椎茸との大きな違いとしてビタミンDが挙げられます。
生椎茸(20g) | 干し椎茸(2g) | |
ビタミンD | 0.1μg | 0.34μg |
約3倍!なぜこんなにも差がつくのかというと、
干し椎茸に含まれているビタミンDは、
生椎茸のエルゴステロールという物質が、紫外線に当たることで生成されるからなのです。
紫外線・・・つまり日光に良く当てて干しているから、量が激増したのですね。
そんなビタミンDは腸管での体内へのカルシウムの吸収を促進したり、骨の成長を促進したりします。
つまり丈夫な骨を作る手助けをしてくれる、とても大切な栄養素です。
この栄養素が少ないと、骨粗鬆症などのリスクが上がりますので、しっかりと摂取しましょう!
ちなみにこのビタミンDは、脂溶性ビタミンつまり脂に良く溶けるビタミン群なので、
戻した干し椎茸を油で炒めて食べると、より効率的に摂取できます。
2-2.赤血球をつくります!貧血を防いでくれる葉酸
次に大きな差が見られたのは葉酸です。
| 生椎茸(20g) | 干し椎茸(2g) |
葉酸 | 2.8μg | 5.4μg |
葉酸はその名の通り葉物野菜に多く含まれるビタミン群ですが、
干し椎茸にも含まれています。
葉酸は同じくビタミン群の一種であるビタミンB12と一緒に、
赤血球の元となる赤芽球という細胞をつくる為に必須なビタミンです。
この葉酸が不足してしまうと、正常な赤血球が作ることが出来ません。
つまり葉酸を取ることで、貧血を予防することができます。
2-3.生椎茸にはありません!お肌を健康に保つビオチン
生の椎茸には見られなかった成分にビオチンがあります。
| 生椎茸(20g) | 干し椎茸(2g) |
ビオチン | – | 0.82μg |
ビオチンは様々な食品に含まれているビタミンであり、
その効果として皮膚や髪の毛を健康な状態に保ち、また皮膚炎を改善させると言われています。
つまり、お肌にとって良い成分ということですね!
このビオチンは水溶性ビタミンの一種で、摂取してもすぐに体外に排出されてしまうので、
毎日継続的に摂取していくことが大切です。
また、卵白に含まれるアビジンという物質と結合してしまう性質があるので、
生の卵白を大量に摂取し続けると、ビオチンが不足してしまうことがあります。
卵を加熱するとこのアビジンは変性するので、その心配はなくなります!
2-4.干し椎茸の香り成分!血栓症の予防に効果的なレンチオニン!
干し椎茸の独特の香りの成分であるレンチオニンという成分があります。
生椎茸に含まれるレンチニン酸に特定の酵素と熱が働きかけることで生成される物質です。
生椎茸が乾燥して、干し椎茸になる際や、水に戻す際につくられます。
そしてこの香り成分は、良い香りで私たちを楽しませてくれるだけでなく、
血液をサラサラにして、血管の中が詰まってしまう血栓症などのリスクを減らしてくれます!
私たちの血管の中には血液の元となる赤血球や、体を守ってくれる白血球。
出血した時に止血をしてくれる、血小板などの成分が入っています。
この血小板は怪我をしたときに、傷口に集まって固まることで止血してくれるのですが、
時々、血管の中で集まって固まってしまうことがあります。
すると血栓となってしまい、血管を詰まらせてしまうことがあります。
レンチオニンには、この血小板が集まって固まってしまうことを防いでくれるのです。
つまり血管内に血栓が出来ずに、血液がサラサラになるのです!
2-5.3大旨み成分のひとつ!血液をサラサラにする効果もあるグアニル酸!
干し椎茸の血液サラサラ効果をもたらしてくれる成分のもう一つは
3大旨み成分のひとつ、グアニル酸です!
このグアニル酸は、食品の中ではほとんど干し椎茸にしか含まれていない旨み成分です。
生椎茸にはほとんど含まれておらず、干し椎茸を戻す際につくられます。
このグアニル酸は、グルタミン酸やイノシン酸といった他の旨味成分と合わせることで
深いうま味を楽しむことが出来るだけでなく、
先程のレンチオニンと同じように、血小板が固まってしまうことを防いでくれる効果があるので、
心筋梗塞や脳梗塞といった怖い病気の予防が期待できます。
3.干し椎茸の栄養を無駄にしない為に気を付けたい3つのポイント!
さて、干し椎茸には魅力的な栄養がたくさんあることが分かったかと思います。
しかしキチンと処理をしないと、せっかくの栄養が無駄になってしまいます。
この章では栄養を余すことなく味わう為の3つのポイントをお伝えします。
3-1.栄養が水に溶けだしてしまうので、干し椎茸の表面の汚れは濡れた布巾でサッと拭く
干し椎茸は水で戻す前に、表面についたホコリなどを取り除きましょう。
流水でジャバジャバと洗ってしまうと、水に溶けやすい栄養素が一緒に流れてしまうので、
汚れを落とすのには、水で濡らした後に硬く絞った布巾やキッチンペーパーを使いましょう。
ゴシゴシ擦らずに、表面を優しくサッと撫でるようにして拭きましょう!
3-2.うま味を逃がさない為に干し椎茸の戻しは冷水で8時間程掛けてじっくりと戻す
干し椎茸を水で戻す時は、冷水に浸しましょう。
なんとなく早く戻りそうだからと、ぬるま湯などに浸してしまうと、
干し椎茸のうま味成分であるグアニル酸を分解してしまう酵素が、
40℃~60℃の間で活性化されて、どんどんグアニル酸を分解してしまいます。
そうすると、せっかくのうま味と血液サラサラの効果が弱くなってしまいます。
グアニル酸は低温で長時間さらすと、増えるので水に浸したら、
冷蔵庫で8時間程かけて、じっくりと戻しましょう。
3-3.戻し汁は捨てずに料理に使う
干し椎茸を冷蔵庫で8時間程浸したら、
濃い茶色の汁が出来ます。
この戻し汁には、うま味成分であるグアニル酸や
水に溶けやすい栄養成分がたっぷり含まれているので、
干し椎茸だけ取り出して、捨ててしまわないようにしましょう!
この戻し汁を、鰹だしや昆布だしと合わせると、より美味しくなります!
4.まとめ
干し椎茸は、生の椎茸と比べると、
・骨を丈夫にする手伝いをしてくれるビタミンD
・貧血を防いでくれる葉酸
・お肌を健康に保ってくれるビオチン
などの栄養が豊富に含まれています。
その他にも特徴的な栄養として
・血液をサラサラにする効果があるレンチオニンやグアニル酸
といった栄養成分も含んでいます。
これらの栄養は体に良い影響を与えてくれますが、
たくさん食べれば病気が治る!
というものではございません。
バランスの良い食事を心がけて、
その中で干し椎茸の栄養や旨みを楽しんでくださいね!
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