料理の作り方で必ず言われる作業が「灰汁(あく)を取る」ことです。
灰汁(あく)を取ることによって料理のあじわいがすっきりしたり、見栄え良くできたりします。
ここで重要なのは現代の食材、特に野菜の灰汁は適度に灰汁を取ることです。
ところで灰汁(あく)とは何でしょうか?
灰汁(あく)とは食品に含まれる「にが味」「えぐ味」「しぶ味」などの総称です。
しかし、灰汁(あく)はその食品の風味をつくり、体に良い成分もあります。
灰汁(あく)は大別すると2種類あります。
・野菜など植物に含まれるもの
・肉や魚などから出るもの
この違いによって灰汁(あく)の取り方や取り除く程度は変わってきます。
灰汁(あく)の種類と取り方の違い、また適度に残すべき灰汁(あく)の成分などを化学の面からご説明します。
目次
1. 灰汁(あく)とは
「あく」は「灰汁」と書きます。
もともとは草木を焼いた「灰」を水に溶いた汁のうわずみを使って山野草のにが味やえぐ味を取り除いて食べやすくしていました。
そこから転じて、食品に含まれる不要な成分を灰汁(あく)と呼ぶようになりました。
灰汁には大きく分けて「植物由来の灰汁」と「動物由来の灰汁」の2種類あります。
植物性でも動物性でも基本的には灰汁は取った方が良いです。
1-1 植物性の灰汁
取り除きたい野菜の灰汁は舌に残るようなえぐ味の原因となる野菜に含まれる灰汁です。
そもそも野菜には草食動物から食べられないように、刺激のある物質や栄養の吸収を妨げる物質などが含まれているものがあります。
代表的な食品にほうれん草・ごぼう・レンコン・山菜類があります。
これらは食材に応じた方法であくを抜きましょう。
1-2 動物性の灰汁
動物性(肉や魚)の灰汁は血液やタンパク質が固まったもので、取り除いたほうが見た目も味わいもすっきりと仕上がります。
肉や魚を調理するときに出る水溶性のタンパク質や血液は煮汁に溶け出した後、熱により固まります。固まることにより乳白色や茶色の泡になり、煮汁をにごらせます。また灰汁のクセのある味や臭いがそのまま料理に残ることもあります。
じょうずに灰汁を取り除くと見栄えの良い料理ができます。
2. 灰汁取りに神経質にならなくてよい
2つの理由
灰汁はにが味やえぐ味、しぶ味の原因にもなりますが、別の視点から見ればその食品の持つ「味わい」でもあります。
特にアミノ酸などのうま味成分は水に溶ける性質を持っているので、極端な灰汁取りは食品本来の持つ風味を減らしてしまいます。
また、栄養の面からみても神経質に取りのぞき過ぎないことをお勧めします。
2-1健康に有効な成分を逃してしまう可能性があるから
野菜からでる灰汁は渋みや苦みの原因とされますが、実は健康に有効とされる「ポリフェノール類」や「タンニン」などが含まれています。
また切った野菜を水などにさらすとビタミンC などの水溶性栄養素が水に溶けだしてしまいます。
せっかくの栄養素を取り入れるため、灰汁取りは料理の目的に応じて適度におこないましょう。
2-2おいしさを損なう可能性があるから
野菜の苦みや渋みは見方をかえればその野菜の個性でもあります。春の山菜の魅力はほろ苦さといってもいいでしょう。
また、肉や魚を調理するときに出る灰汁も取り除きすぎないことをお勧めします。特にうま味物質となるアミノ酸は水に溶ける性質を持っているので、極端な灰汁取りはおいしさや食品本来が持つ風味を失ってしまうこともあります。また、灰汁はたんぱく質とミネラルが結びついたものが多いので、ミネラルが減ってしまいます。
お肉からでた「血」などが固まった白や茶色のアワ状の灰汁以外は残っていてもだいじょうぶです。
3. 灰汁(あく)の取り方
灰汁(あく)には「植物由来の灰汁」「動物由来の灰汁」の2種類あり、灰汁の取り方の傾向も違ってきます。
3-1 野菜の灰汁(あく)の取り方
野菜のような植物の灰汁成分は、ほどんどが水に溶ける性質を持っているため、水に漬けたリ、さらすことで除去することが出来ます。食材によっては「酢」や「重曹」などを使い分けます。
*ここに載っていない食材は灰汁を心配しなくても大丈夫です。気になる場合は水に短時間さらす程度でじゅうぶんです。
3-1-1 水にさらす
野菜の灰汁のほとんどが水に溶けやすい性質を持っているため、食材を切って水に3分~5分漬けるだけで灰汁は抜けます。なす・サツマイモ・じゃがいもなどの野菜で、これらは切って空気にふれると色が変わりやすい性質があるので変色を防ぐためにも有効です。つける時間が長すぎると水っぽくなるので気をつけてください。
3-1-2 酢水につける
食材の色をより白く仕上げたい時に行います。レンコンやゴボウなどを水500㏄にお酢小さじ1杯を溶かした「酢水」に5分程度漬けます。
3-1-3 ゆでる
水につけるだけでは取り除けない野菜の灰汁は数分ゆでて灰汁を取ります。ゆでると野菜の細胞が壊れるので、灰汁の成分が溶けだしやすくなります。
ゆで汁にはあくの成分が入っていますのでゆで汁は捨てます。
ほうれん草はシュウ酸というえぐ味のもとになる成分が多く含まれているので、さらに水にさらすと食べやすくなります。
3-1-4 米ぬかでゆでる
食材によってはゆでるときに「米ぬか」を使います。
よく知られた野菜はだいこん・竹の子・ゴボウなどです。米ぬかのカルシウムやアミノ酸の働きでシュウ酸などのえぐ味を感じにくくしてくれます。
特に竹の子では固い繊維をほぐしてやわらかくします。
3-1-5 重曹を使う
ふきやワラビなどの山菜にはゆでただけでは灰汁は抜けません。
ふきの場合は沸騰したお湯1リットル当たりに重曹小さじ半分を溶かして柔らかくなるまでゆでます。
ワラビは重曹を溶かしたぬるま湯に1晩ていど漬けておきます。
いずれも入れすぎると食材が柔らかくなりすぎるので注意しましょう
3-2 動物(肉・魚)の灰汁の取り方
動物性の灰汁は煮汁に浮き上がったものをまとめて取ると効率が良いです。
- 鍋を火にかけてスープの温度が上がってくると、肉などの血液や肉汁が少しづつ固まりだします。
- このタイミングで火を強くします。そうすると煮汁が沸きあがり灰汁が中心に集まってきます。
- 灰汁が中心に集まってくるので数回に分けることなく、いちどきに取ります。
- 終わったら、弱火~中火にして加熱を続けます。
灰汁取りがすむまでは鍋のふたは取っておきましょう。
ふたをしていると、灰汁が具材やスープに溶け込んでしまうからです。
4. まとめ
なべ物や煮物に出る肉,魚類の灰汁はまめにとった方が味も仕上がりもよくなります。
半面、それ以外の灰汁はさほど神経質にならなくても大丈夫です。
野菜は品種改良などの努力によって以前にくらべて、苦みや渋み、えぐ味がなくなってとても食べやすくなりました。
ピーマンやにんじんなど以前は子供が嫌いな野菜の代表でしたが、今は「にんじんシリシリ」など大人気なメニューです。
山菜も栽培種は野菜のものよりずっと灰汁は少なくなってきています。
苦みも渋みも食材の個性です。健康栄養素を取り入れてまるごと、おいしくいただきましょう。
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