熟成とは?発酵との違いと熟成することで食材が美味しくなる理由

熟成肉って最近よく聞くと思いませんか?
いったいどんな肉なのでしょうか。

時間をかけてよい状態になることを熟成といいます。
熟成肉の場合は時間をかけておいしい状態になることを言います。

熟成肉は通常の肉よりも旨味がつよく、肉好きにはたまりません。
肉は熟成させると、酵素の働きにより柔らかくなり、アミノ酸が増えておいしくなります。

おいしくするための技法は主に3つあります。

  • ドライエイジング
  • 枯らし熟成
  • ウェットエイジング

技法によって風味が違います。
今回は、この3つの主な技法や味や香りの効果についてご紹介していきます。


1.熟成について

1-1.熟成とは

熟成とは、時間がたって十分なころあいになることです。
熟成肉の場合は時間をかけておいしい状態になることを言います。

酵素と環境(湿度・温度・時間)の総合的な働きによってタンパク質が分解されてアミノ酸になります。
それによって、柔らかくなったり、旨味が増したりしておいしくなります。

次に、熟成と発酵、腐敗の違いについて紹介します。

1-2.熟成と発酵、腐敗の違い

「熟成」と「発酵」の違いは、物質そのものの酵素での変化か、微生物による変化かの違いとなります。
そして「発酵」と「腐敗」の違いは、微生物によって人間にとって有益になるか害になるかです。

変化の要因変化後の有効性
熟成自らの酵素人間にとって有益
発酵微生物の働き人間にとって有益
腐敗微生物の働き人間にとって害

<熟成>
肉などの自らの酵素の働きで保水性が高まったり、タンパク質がアミノ酸やペプチドに変化する。

<発酵>
微生物(酵母や乳酸菌)が働き、物質を分解することで人間にとって有効な食材に変化する。

<腐敗>
微生物(酵母や乳酸菌)が働き、物質を分解することで人間にとって害になる食材に変化する。

1-3.熟成の3つの種類

熟成の技術には主に3つの種類があります。

  • ニューヨークから伝わった「ドライエイジング」
  • 昔からある技法の「枯らし熟成」
  • 真空にして保存する過程で生まれた「ウェットエイジング」

3つの熟成方法についてご紹介していきます。

(1)ドライエイジング

ドライエイジングはニューヨークから伝わった技法で、管理された環境で乾燥させながら熟成する方法です。
専用の貯蔵庫の中で、湿度・温度を調整し風を循環させながら水分を抜き、2週間から2ヵ月程度かけて熟成していきます。熟成の過程で自然に微生物がつきます。
元々は、アンガス牛をドライエイジングしていました。
肉は、骨付きの枝肉や塊肉のまま利用します。
表面にカビが生えるので、そぎ落とします。
乾燥させることや、トリミング(表面のカビをそぎ落とす)するところが出てくるため、歩留まりが悪くなります。つまり、無駄な部分がでて効率が悪く、利益率が低くなります。

味はアミノ酸が増えることで旨味が増し、おいしくなります。
また、ナッツのような香りと、柔らかい食感が味わえます。

(2)枯らし熟成

枯らし熟成は日本に古くからある技法で、枝肉のまま吊るし熟成する方法です。
およそ、3~4週間かけて熟成させます。
冷蔵庫内で、肉に最適な菌が自然に付着し、水分がゆっくりと引き出されます。
また、骨のままで吊るすことで、肉に負担がかかりにくくなります。
なぜ負担がかかりにくいかというと、骨格があることで重力が分散され、一部に加重されにくいからです。
ドライエイジングと同様に、水分が抜ける事や、トリミング(表面のカビをそぎ落とす)するところが出てくるため、歩留まりが悪くなります。つまり、無駄な部分がでて効率が悪く、利益率が低くなります。

古くからある技法ではありますが、真空技術の発達や流通の発展などにより、あまり活用されなくなり貴重なものとなりました。

味は、アミノ酸が増すことで旨味も増し、おいしくなります。
人工的に風をあてずにゆっくりと乾燥させることで旨味が凝縮され、水分が均一に調整され肉の持つ旨味を引き出すと言われています。
また、和牛香と呼ばれる豊かな香りがし、肉質は酵素の働きにより柔らかくなります。

(3)ウェットエイジング

ウェットエイジングは、真空にして貯蔵庫で寝かす技法です。
パーツごとに分けて、外気に触れないように真空にして0℃~1℃の貯蔵庫で1~2週間程度寝かせます。
吸水紙を当てて取りかえながら真空パックにする場合もあります。

元々は輸送の際に、肉の劣化を防ぐため真空にしていました。数日寝かせると、肉の酵素の働きにより肉質が柔らかく、旨味も増すことがわかりました。
肉質は柔らかくなるのですが、「ドライエイジング」や「枯らし熟成」ほどには旨味は増しません。

保存するために使用されていたこともあり他の技法に比べれば管理がしやすくなります。
水分があまり減らずに、トリミング(表面のカビをそぎ落とす)するところがあまりない為、歩留まりが良くなります。つまり、効率がよく、利益率が高くなります。

味は、ねっとりとして旨味があります。
他の技法に比べるとあまり熟成香はありません。チーズやバターのような濃厚な香りがするものもあります。

店頭に並んでいる牛肉は、流通の過程である程度時間が経っており、そのほとんどがウェットエイジングされたものでしょう。


2.熟成による4つの効果

2-1.旨味が増しておいしくなる

旨味が増しておいしくなります。
熟成が進むことで、タンパク質がアミノ酸やペプチドに変化し増量します。このアミノ酸は旨味成分の一つで、人の舌が旨味として捉えておいしさを感じるものです。
ドライエイジングや枯らし熟成では、乾燥させる過程でさらにアミノ酸量が多くなり旨味が凝縮されます。

2-2.アミノ酸が増え身体に吸収されやすくなる

肉は、タンパク質が豊富で、鉄やビタミンB12、亜鉛など不足しやすい栄養素も含まれています。また、熟成させることで旨味成分であるアミノ酸((グルタミン酸塩))が増えます。

人の身体を作るのに必要なたんぱく質は、そのままでは吸収されずペプチド・アミノ酸に分解され吸収されます。

熟成肉のようにアミノ酸に変化していると、栄養分が吸収されやすくなります。

参考:タンパク質はどのように消化・吸収される?

2-3.柔らかい食感

食感は、柔らかくなります。
肉は、死後硬直によって硬くなりますが、時間がたてば硬直が解けて軟らかくなります。
また、酵素の働きにより筋線維が分解されアミノ酸になることにより、柔らかくなります。

2-4.熟成香の芳醇な香り

熟成香といわれる芳醇な香りがします。
技法により異なりますが、ドライエイジングはナッツの香り、枯らし熟成は和牛香と呼ばれる香りがします。
ウェットエイジングはあまり香りに変化はありませんが、熟成具合によってはチーズやバターの香りがすることがあります。


3.熟成された食材の安全性

熟成と腐敗は紙一重です。

肉は腐る手前が一番おいしいと言われていますが、
そこを見極めるには、プロの手による管理と経験が大切になります。

ドライエイジングや枯らし熟成では、熟成する過程で微生物が付着します。
微生物が人にとって有効に働けばおいしく熟成されますが、湿度や温度の変化次第では悪影響を及ぼす微生物が付着し腐敗することもあります。

また、どの技法でもタンパク質の変化が行き過ぎると、アミノ酸を通り越して、硫化水素やアンモニアのような腐敗へと変わってしまいます。

上手に熟成されても、トリミングの際に取り除いた部分の菌が食用の肉に付着しないように注意を払わなければなりません。

腐らないように技法を使い、細心の注意を払って熟成肉が作られます。
プロの手による管理と見極めが大切になります。

肉を専門に扱っているところや、専門店を選んで購入することをお勧めします。


4.自宅での熟成をおすすめしない4つの理由

ご自宅で熟成肉を作るのはお勧めしません。
お勧めしない理由は以下の4つです。

  1. 設備を用意できない
  2. 衛生管理が難しい
  3. 見極めが難しい
  4. 肉を用意できない

4-1.設備を用意できない

設備を用意するのが大掛かりです。
「ドライエイジング」では、湿度・温度を調整し風を循環することができる専用の貯蔵庫が必要です。
「枯らし熟成」では、清潔で大きめの貯蔵スペースが必要です。
自宅でできる可能性が一番高い「ウェットエイジング」ですが、ご家庭の冷蔵庫では開け閉めで温度が変化しますので専用の冷蔵庫が必要となります。

4-2.衛生管理が難しい

衛生管理はプロでも難しいものです。
雑菌が入らない環境の管理や、肉が腐敗しないように、湿度・温度等を調整していかなければなりません。また、肉の個体ごとの特徴も把握しながら、管理をしていきます。
プロでも難しい管理なので、素人が安全を十分に確保できるものではありません。

4-3.見極めが難しい

熟成しすぎると腐敗になります。
どこまでが熟成でどこからが腐敗なのかを見極めるのは難しいです。
決まった日数を守れば必ず成功するわけではありません。
また、周りにつくカビが、有害なのか無害なのかの判断も難しいです。

4-4.肉を用意できない

取れたて(屠畜したばかり)の枝肉や骨付きの肉は、手に入れにくいです。
また、塊肉が手に入れられた場合でも、それがすでに時間が経過したものかわかりませんし、すでに真空パックにして運ばれてきた肉の可能性が高いです。


5.熟成に関する予備知識

5-1.熟成の期間はどう影響するか

短ければ熟成は進まず、長ければ腐敗になります。

適正な熟成期間は技法により異なります。
水分の調整をするのか、微生物が付着するのか、温度・湿度はどのくらいなのかなどにより熟成の進み具合が異なるからです。
また、牛種によってもことなりますので、一概に長ければおいしく、短ければおいしくないわけではありません。

5-2.「鮮度が良い」「熟成されている」結局どっちが美味しいか

赤身の肉に関していえば、熟成されていた方が、アミノ酸が増えおいしく感じます。
タンパク質が豊富なためアミノ酸に変わる部分が多いからです。

和牛のような霜降りで脂分が多ければ、熟成しておいしくなる場合もあれば、ある程度鮮度の良い状態で食べた方がおいしい場合もあります。

ただし、鮮度が良いと言っても、屠畜してすぐに食べることは困難です。
枝肉にしから冷蔵庫で寝かせなければさばけませんし、解体工場へ運んだり、お店へ流通したりするにもある程度時間がかかります。

5-3.熟成された食材の賞味期限

提供元の賞味期限がありますので、そちらを参考にしてください。
牛肉は屠畜してから枝肉や塊の状態で流通した場合は比較的長く保存できますが、
スライスして店頭に並べられてからは酸化が進みます。
出来るだけ早く食べられることをお勧めします。

5-4.熟成された食材の保存方法

普通の肉と同様に冷蔵庫やチルド等で保存しできるだけ早く食べる事をお勧めします。


6.まとめ

肉は熟成させると、酵素の働きにより柔らかくなり、アミノ酸が増えておいしくなります。
ドライエイジングや枯らし熟成の肉には、濃縮した旨味と香りがあり、豊かな食事になるでしょう。
ただし、熟成の先には腐敗があります。
信用できるお店で購入したり、食事を楽しみましょう!

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