「海外にも出汁はあるの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
日本料理の基礎となる鰹出汁や昆布出汁と同じように
素材の旨みが出た出汁を活用した料理は海外にもあるのでしょうか?
実は海外にも出汁はあります。
それどころか世界中の料理に出汁は使われているんです。
ヨーロッパのブイヨンやフォン
中国料理の上湯(シャンタン)
などは日本でも有名ですが、
その他にも料理に活用できる旨みを含んだ「出汁」が
世界中に存在しています。
この記事では海外にはどんな出汁があるか
その出汁がどのような料理に使われているか、地域別に紹介します。
これを読めば海外の出汁を知ることができ、
日本料理のアレンジや本格的な海外の料理を作るための知識を得ることが出来ます。
目次
1.欧米(フランス)
フランス料理で使われる出汁は主に「ブイヨン」「コンソメ」「フォン」と呼ばれ、主に以下の違いがあります。ここではこれらの出汁の種類や使われ方を説明します。
ブイヨン:スープのベースに使われる出汁
コンソメ:ブイヨンをさらに味付けしたスープ(出汁)
フォン:ソースのベースに使われる出汁
1-1 ブイヨン(ブロス(英語)、ブロード(イタリア語))
ブイヨンはスープのベースに使われる出汁のことで、日本の鰹出汁や昆布出汁に近く、素材(原料)によって呼び方が以下のように異なります。
またブイヨンはフランス語で、英語ではブロスもしくはスープストック、イタリア語ではブロードと呼ばれますが、ブイヨンと同じものを指します。
フランス料理の「ブイヨン」の種類
種類 | 素材原料 | 特徴 |
ブイヨン・ド・ヴォライユ | 鶏がら | 鶏がらを使ったブイヨン。ブイヨンの代表で料理全般に使用される。 |
ブイヨン・ド・ブフ | 牛の骨や筋、すね肉 | 牛の骨や筋、すね肉から煮出したブイヨン。で、主に肉料理に使われる。 |
フュメ・ド・ポアソン | 魚の骨 | 魚の骨から煮出したブイヨン。主に魚料理に使用されるほか、ソースにも使われる。 |
ブイヨン・ド・レギューム | 野菜 | 野菜のブイヨン。魚を煮込む料理に使われる。 |
1-2 コンソメ
コンソメは出汁であるブイヨンにさらに他の材料を入れて味付けして濾したスープのことです。
ブイヨンに追加して味付けをしてあるため、料理のベースとなるだけでなく、そのままスープとしても使えます。
1-3 フォン
フォンとは主にソースのベースに使われる出汁のことです。
素材によって呼び方(種類)が以下のように異なります。
フランス料理の「フォン」の種類
種類 | 素材原料 | 特徴 |
フォン・ド・ヴォー | 仔牛の骨 | 仔牛の骨を使った褐色のフォン |
フォン・ド・ヴォライユ | 鶏ガラ | 鶏ガラを使った白色のフォン |
フォン・ド・ジビエ | 野鳥獣 | 素材に野鳥獣を使った褐色のフォン |
フュメ・ド・ポワソン | 魚のあら | 魚のあらを使った白色のフォン |
フォン・ド・レギューム | 野菜 | 野菜を使ったフォン |
フランス料理にはこれらの他にも出汁に似た料理のベース調味料として以下のものがあります。
ジュ:素材から出た水分のことをジュといい、肉を焼いたときに出る肉汁などを指す。そのまま料理に使ったり、煮詰めてソースに使われます。
グラス:フォンやジュを煮詰めて濃度を高めたエキスのことで、料理にコクを出したいときに使われます。
2.アジア
2-1 湯(タン)(中国)
中国では出汁にあたるものを「湯(タン)」と呼びます。
湯の特徴は出汁取り用の素材をとったあとに料理につかうため、だしがらとならない場合が多かったり、油をあえて取らず、肉の臭みとりにネギや生姜を一緒に煮込むことが多いです。
また素材の違いや見た目によって以下のような多くの呼ばれ方があります。
中国の「湯(タン)」の種類
種類 | 素材原料 | 特徴 |
葷湯:ホウンタン | 動物性 食肉や骨、魚介類の干物など | 食肉や骨、魚介類の干物などなど動物性の素材からとった湯の総称 |
鶏湯:ジータン | 丸ごとの鶏 | 鶏肉を丸ごと使った湯 |
毛湯:マオタン | 鶏ガラ | 鶏ガラを使って取った比較的な万能スープ |
肉湯:ロウタン | 豚肉 | 豚のもも肉、ロース肉を使った湯 |
排骨湯:パイクウタン | 豚肉 | 豚のあばら骨を使った湯 |
乾貝湯:ガンベイタン | 干し貝柱 | 干し貝柱を使った高級な湯 |
乾鮑湯:カンパオタン | 干しあわび | 干しあわびを使った高級な湯の代表 |
蝦米湯:シャーミータン | 干しえび | 干しえびを使った湯 |
素湯:スータン | 植物性 野菜、豆類、キノコなど | 野菜、豆類、キノコなど植物性の素材から取った湯の総称 |
蔬菜湯:シューツァータン | 野菜 | キャベツ、白菜、人参、玉ねぎを使った、野菜の旨みがでたスッキリとした湯 |
搾菜湯:ザーツァイタン | ザーサイ | ザーサイを煮込んで取る湯 |
香茹湯:シャンルウタン | 干ししいたけ | 干ししいたけを使った湯 |
清湯:チンタン | 脂肪の少ない肉 | 脂肪の少ない肉を弱火で煮込んで灰汁をとることで取れる澄んだ湯 |
上湯:シャンタン 高湯:カオタン | 金華ハム、丸鶏、牛肉、豚肉 | 金華ハム、丸鶏、牛肉、豚肉を長時間煮込んで味付けした、清湯の中でも高級品 |
白湯:パイタン | 豚骨、脂肪、魚介類 | 豚骨、脂肪、魚介類などを強い火力で長時間煮込んだ、白く濁った湯 |
2-2 ダシ○○(韓国)
韓国の出汁は魚介出汁のダシダや昆布出汁のダシマルなどがあります。代表的なダシダは昆布と魚介の合わせ出汁であり、日本と似た出汁文化と言えます。
以下の種類が韓国の代表的な出汁です。
韓国の出汁の種類
種類 | 素材原料 | 特徴 |
ダシダ | 魚介 | 魚介の旨みを含んだ韓国の代表的な出汁。昆布も入っているため合わせ出汁といえる。鍋料理スンドゥブチゲなどに使われる。 |
ダシマル | 昆布 | 昆布からとられる淡泊な味わいの出汁でスープなどに使われる。 |
ダシモル | 食肉、骨 | 肉や骨の旨みを含んだコクのある出汁で、肉料理に使われる |
ダシガンジャン | 魚の塩漬け | 塩漬けの魚を使用し旨みと塩分が濃く、タレや調味料として使われる |
2-3 アジアの他の国の出汁
アジアの他の国の出汁について説明します。
①ベトナム
ベトナムの代表的な出汁は牛出汁です。その他にも鶏や海鮮の出汁も使われ、ベトナムの代表的な料理のフォーに欠かせないスープになります。
②タイ
タイも出汁を活用する料理があります。代表的な料理トムヤムクンはエビの殻や頭からとった出汁を使い、カオマンガイという料理には鶏の出汁で炊いた米を使います。日本の炊き込みご飯のようなものです。
またアジアの大国インドには出汁を取って料理に使うということはありません。その代わりに「グルタミン酸」を多く含むトマトがインド料理には欠かせず、料理に旨み成分を加えています。
3.その他の地域の出汁
これまで紹介したヨーロッパ、アジア以外にも出汁を使用した料理のある国を紹介します。
3-1トルコ
世界三大料理に数えられるトルコ料理のピラフは、米を炒めたあとに鶏などの出汁(スープ)で炊きます。
3-2アフリカ(モロッコ)
アフリカのモロッコの料理にタジンという独特の形の鍋を使用した煮込み料理があり、これは鶏肉や野菜を煮込むためそれらの出汁が味わえます。
3-3ロシア
ロシアの代表的な料理のボルシチは牛のすね肉を煮込んだ出汁を使い、煮込んだすね肉は具材にもなります。
4.まとめ
出汁は海外でも料理に活用されています。
素材の旨み成分を含んだ出汁を使うことで、料理がとても魅力的になります。
海外にある出汁を知り、これからの料理のアレンジや本格的な料理を作るために
この記事の知識を活用ください。
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