旨味とは何かご存知でしょうか?どのような成分なのか、どのように活用されているのかわからない方も多いのではないでしょうか?
旨味成分は3つに分かれています。
- アミノ酸系物質
- 核酸系物質
- 有機酸系物質
ここでは、それぞれの旨味成分がどんな物質か、そしてどのように生成されるのかを紹介していきます。
また、あなたの料理がさらにおいしくなる裏ワザも伝えていきますので、ぜひご参考にしてください。
1、旨味とは
旨味とは、4つの基本味、甘味、酸味、塩味、苦味の後に発見された第5の味と定義された基本味の一種です。
それら4つの基本味を混ぜ合わせても作ることができない、独立した味です。
旨味物質成分は、アミノ酸系、核酸系、有機酸系と3つ分かれています。
旨味物質成分は蛋白質の豊富な食材の中に多く含まれています。
しかし、蛋白質その物には味がありません。蛋白質を分解して、構造が崩れつながっていない状態のアミノ酸になって初めて味が感じられるようになります。
ばらばらなったアミノ酸は「遊離アミノ酸」といいます。
遊離アミノ酸は旨味成分だけではなく、その他の甘味、酸味、苦味の成分も含まれています。
2、旨味成分
2-1、グルタミン酸
グルタミン酸は肉や魚、野菜など、さまざまな食材に含まれています。最初に昆布だしの中から発見されたので、昆布だしの旨味成分としてよく知られています。
実は、体の中にもグルタミン酸が存在しています。グルタミン酸は、重要な役割を担っていることで知られています。例えば、生体内では脳内での含量が高く、神経情報伝達に関与しているといわれています。具体的には「脳の代謝を促す」「うつを改善する」ともいわれています。
グルタミン酸は体の必須アミノ酸の中の一つです。必須アミノ酸は、自力では十分な量を合成できません。ただしあ、栄養分として体内に必要なアミノ酸のことです。そのため外部より摂取する必要があります。母乳の中にもグルタミン酸が含まれています。生まれたばかりの赤ちゃんは母乳を介して「旨味」と出会っているということになりますね。
グルタミン酸を多く含む食材は、トマト、チーズ、小麦たんぱく、鶏肉、牛肉等があります。
2-2、イノシン酸
イノシン酸は肉や魚など動物性の食材に多く含まれています。体の中にある「ATP(アデノシン三リン酸)」が酵素により分解された後の生成物です。
イノシン酸は核酸の一種です。核酸はヌクレオチドとも呼ばれるリン酸を含んだ物質です。イノシン酸はうまみを感じさせるヌクレオチドです。鰹節の旨味成分として発見されたため、鰹節の代名詞となっています。
イノシン酸の生成メカニズム下記のように肉や魚が熟成される過程で生成されます。
*松葉ガニの旨味を科学で考える
生きている体はAMPから新たなATPを作り出して、生命活動のサイクルを行っているため、イノシン酸の生成は、この生命活動サイクルが止まった後になります。イノシン酸を生成後、さらに時間経過すると、イノシン酸はヒポキサンチンという臭み成分へ変化し、腐敗状態となります。
イノシン酸が多く含まれている食材は、畜肉類や魚類です。
2-3、グアニル酸
グアニル酸は干し椎茸などの乾燥したきのこに多く含まれています。そのため、椎茸の旨味成分と言われています。イノシン酸と同様に核酸に分類され、味のするヌクレオチドの一種です。
グアニル酸は干し椎茸や干しキノコ類のだし汁に存在します。戻し汁にはグアニル酸の元となる「リポ核酸」が抽出されるのですが、水温は5℃前後、5時間程度の条件が一番効率よく抽出されます。
その汁を加熱するとグアニル酸が得られます。「リボ核酸」を60~80度で20分程加熱すると「リボ核酸分解酵素」が働き、旨み成分である「グアニル酸」に変わりますが、この時に45度~60度の温度帯は「ヌクレオチド分解酵素」が働き、増えた「グアニル酸」を「グアノシン」変えてしまいます。80度以上になると「リボ核酸分解酵素」は失活されるので、できる限りこの温度帯(45~60度)を早く通過させる事が重要です。
生の椎茸やキノコ類は、細胞壁が壊れていないため、リボ核酸が抽出されにくいため、グアニル酸の生成量は低いです。
グアニル酸を多く含まれた食材は、乾燥キノコ類以外にはポルチーニ、ドライトマト、ずわいがに、ウニなどにも含まれています。
*大将の社
2-4、コハク酸
コハク酸は主に貝類・清酒の旨味成分です。酸味、苦味、酸味と混ざったような旨味となります。添加量によって「えぐ味」が生じるため、コハク酸をメインにした調味料は一般的ではありません。
コハク酸は、人体中のエネルギー代謝過程中の代謝有機酸の一つです。有機酸とは一般に窒素を含まない炭素化合物のことです。その他の有機酸では酢酸、クエン酸、乳酸が有名です。
コハク酸は、コハク酸脱水素酵素という形で体内に存在しています。細胞が呼吸から酸素を取り込み、活動に必要なエネルギーを生成するための仕組み、TCA回路(クエン酸回路)というエネルギー代謝に重要な役割を果たしています。
そして、コハク酸は食品だけではなく、冷え性、肌荒れ、殺菌・抗菌効果もあるため、化粧品や入浴剤にも使われています。
2-5、アスパラギン酸
上記の4つの旨味成分以外に、アスパラギン酸も旨味成分の一つでアミノ酸の一種です。アスパラガス中に多く含まれています。そのほか、牛肉や豚肉、鶏肉といった肉類に多く含まれている栄養素です。鰹節だし汁にも検出されています。
即効性のエネルギー源のため、栄養剤の成分としてその名前を聞いたことがあるかもしれませんね。
3、旨味成分の使い方
スーパーで購入できる旨味調味料を利用するは一つの方法ですが、実は、もっと簡単な方法で旨味成分を利用できます。
その方法は「だし」をとることです。
グルタミン酸は昆布だし、イノシン酸は鰹節だし、グアニル酸は椎茸だし、コハク酸はアサリスープで取れます。
ここでさらに裏ワザを伝えます。
これらの旨味成分は単独で摂取するより、組み合わせで摂取した方が、旨味を倍以上に感じます。それは、「旨味の相乗効果」と言います。
足し算ではなく、掛け算です。例を見ると、鰹節×昆布、鰹節×昆布×椎茸のような合わせだしです。日本伝統的なだしではなく、世界中でこの掛け算レシピを使っています。洋食では、トマトの海鮮スープ、中華の白湯(バイタン)スープ等あります。つまり、トマト(グルタミン酸)×海老(イノシン酸)×ムール貝(コハク酸)、鶏(イノシン酸)×ネギ(グルタミン酸)ですね。もっと簡単に分けると、動物類(魚介類)×植物類となります。
よかったら「旨味が多く含まれている代表的な食材と相乗効果を生み出す組み合わせ」を参考にしてみてください。
まとめ
旨味物質成分は、アミノ酸系物質、核酸系物質、有機酸系物質の3つ分かれています。
旨味成分は組み合わせによって、相乗効果があります。
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