おひたしとは、鰹節や昆布などからとった、だしと醤油を合わせた調味液に浸した料理のことです。
和食の小鉢でよく見かける料理で、様々な季節の野菜を使ったおひたしがあります。
定番のほうれん草のおひたしは、だしと良く合い抜群の相性です!
本記事では、そんなおひたしについて種類などを解説していき、代表的なほうれん草のおひたしの簡単でおいしい作り方を紹介して、皆様におひたしの魅力を伝えていきます!
目次
1.おひたしとは茹でた食材を出汁に浸す料理法
おひたしとは、ほうれん草などの野菜を茹でた後にかつおだし等とお醤油を混ぜた調味液に浸す料理の事です。
おひたしの始まりは「浸し物」と呼ばれていたらしく、筆者の調べた限り明確なはじまりは残念ながらわかりませんでしたが、奈良時代(710年-794年)には、もうこの調理方法があったと推察されています。
江戸時代(1603年-1868年)の頃には、煎り酒やお酢で味付けをするおひたしや、
いりこやくらげ等の海産物を使ったおひたしもあったそうです。
明治時代(1868年-1912年)以降は、現在のような野菜等を茹でて出汁醤油に浸す形式が、
主流となったようです。
姿形は時代と共に変わってきたおひたしですが、昔から私たち日本人にはとても馴染みの深い料理なのです!
また近年では、茹でた野菜に醤油などを掛けて食べる料理も、おひたしと呼ばれていますが、
厳密には、この調理方法は出汁に浸していないので、おひたしではありません!
1-1.おひたしの3つの種類
私たちが普段おひたしと呼んでいる料理のほかに「揚げびたし」と「煮浸し」があります。
これら3つの料理のことを「おひたし」といいます。
1-1-1.通常のおひたし
いわゆる、私たちが普段「おひたし」と呼んでいる料理です。
茹でた野菜をだしと醤油を合わせた液にひたして食べます。
季節の野菜の素材の味を楽しむことが出来ます。
1-1-2.揚げびたし
なすの揚げびたし
揚げびたしは、なす等を素揚げ(衣をつけないで揚げること)してから、三杯酢やかつおだしに漬け込むもので、おひたしの一種です。この調理方法では、古くなって少し傷んでしまい、そのままではおいしくいただけないなすも、おいしく調理することが出来ます。
浸す出汁に、すりおろした生姜を加えると油っぽさを抑えてくれて、さっぱりとした味わいになるのでおススメです!
1-1-3.煮浸し
焼きなすの煮浸し
もうひとつの調理方法「煮浸し」
おひたしは野菜を単体で茹でてから、冷まして絞ったあとに出汁に浸すのに対して、
煮浸しは、沸騰させたお湯に、出汁と野菜を一緒にいれて煮込み、冷まして味をしみ込ませます。
噛んだら、出汁と野菜の旨味がジュワっとしみ出る、おひたしの仲間です。
野菜と出汁を一緒に煮詰めるので、味は濃くなるので、味付けは少し薄めにするべきです。
使用する醤油は、塩分の控えめな濃口醤油のほうが合います。
1-2.おひたしに合った出汁の合わせ方
おひたしが野菜を出汁にひたして食べる料理ということは、おわかりいただけたと思います。
では、そのひたす出汁についてお話します。
1-2-1.おひたしに使用するのにおすすめの出汁は鰹と昆布の合わせ出汁
野菜の味を活かすおひたしには、鰹と昆布の合わせ出汁が最適です。
この合わせ出汁は、上品な香りと旨みなので、主役の野菜の邪魔をしません。
旨みの秘密は、鰹節に含まれる旨み成分「イノシン酸」と、昆布に含まれる旨み成分「グルタミン酸」
このふたつの旨み成分の相乗効果です!
1-2-2.黄金比は合わせ出汁:醤油:みりん=8:1:1
おひたしには合わせ出汁:醤油:みりん=8:1:1の割合で混ぜ合わせた出汁が最適!
この混合出汁は、薄めの醤油味にほのかにだしが香り、野菜と合わせると、とても良く合うからです。
醤油は主に「薄口醬油」と「濃口醤油」の二種類が使われますが、
薄口醤油を使った場合は、色が薄く透き通っているので、醤油の風味よりも見た目を優先したい場合におすすめです。
濃口醤油を使った場合は、料理に醤油の味をしっかり付けたい場合におすすめです。
筆者も鰹と昆布の合わせ出しをベースに濃口醤油とみりんで出汁を作ってみましたが、
醤油だけの味にはならず、しっかりと出汁の味や香りを感じることが出来ました。
また、みりんはアルコールを飛ばしてから混ぜましたが、みりんが入っていることで、まろやかさも出ていると思います。一見薄そうですが、十分に味がついているので、他の味付けは必要ないなぁと感じます!
醤油は関西圏では薄口醤油が主流だったり、関東圏では濃口醤油が主流だったりと、地域や家庭などによって好みが分かれますが、どちらの醤油でもおいしく作れますので、お好みでどうぞ!
1-3.鰹節をかけて旨みをプラス!
おひたしは野菜のそのものの味と、出汁の味だけでも十分においしいのですが、
さらに、おいしくいただくには、鰹節を上にトッピングしましょう!
鰹節をのせることで、おひたしの味を邪魔せずに風味を足すことが出来て、
さらに鰹節の良い香りがフワッと香るようになり、食欲が増します。
見た目も華やかになるので、良い事尽くし入れない手はありません!
おひたしに乗せる一番のお勧めの鰹節は、本枯節です。
本枯節は上品な香りが特徴で、料理の味を損なわずに、風味をより良いものにしてくれます。
スーパー等で本枯節を買いたい場合は、原材料名に注目してください。
「かつおのかれぶし」などと表記されているものが、本枯節です!
追い鰹で風味や香りを足すだけでなく、見た目も良くしたい場合は糸削りがお勧めです。
糸削りを使った天盛り
糸削りはきれいな桜色をしており、料理に盛った時の見栄えが大変良くなります。
糸削りのように香りがよい物を、おひたし等の上に少量盛る手法は、天盛り(てんもり)と呼ばれており、
おひたしとの相性は抜群なのでお勧めです。
2.季節野菜で出汁を変える。春野菜には辛みを、秋野菜には砂糖。
基本的な出汁は、鰹と昆布の合わせ出汁:醤油:みりん=8:1:1とお伝えしました。
それに加えて、季節の野菜に合わせて味付を変えることで、よりおいしくなるので、変えましょう!
2-1.苦味の強い春野菜には辛みをつける
春野菜を使ったおひたしには、菜の花やふきのとう、せりなどがあります。
これらの野菜の栄養価は非常に高いですが、青臭く苦みが強いので、クセのある味わいの野菜ばかり。
そんな苦みの強い春野菜には、からしやゆず胡椒などを入れるのがおすすめ!
ピリッとした辛味が、春野菜の苦みを抑えつつ味のアクセントとなるので、よりおいしくなります。
反対に、甘い味付けは苦みと反発して合わないので、おすすめできません。
2-2.旨みたっぷりの秋野菜には、砂糖の甘さがよく合う
秋野菜を使ったおひたしには、ほうれん草やナス、きのこなどがあります。
食欲の秋と言われる季節に活躍するこれらの野菜は、旨味をたっぷりと含んでいますが、
春野菜のような青臭さや苦みは控えめな野菜が多いので、
野菜本来の味を活かす、やさしい味付けが合います。
甘みを付けても合いますので、お好みで八方だしにお砂糖を少々入れるのもgood!
3.代表的なおひたしをご紹介!
おひたしと言えば、ほうれん草!と真っ先に思い浮かぶ方も多いかと思います。
野菜を茹でて出汁に浸したものならば、全て「おひたし」ですので、
野菜の数だけおひたしの種類があると言っても過言ではありませんが、
おひたしに一番合う食材はほうれん草です!
ほうれん草に多く含まれているシュウ酸というえぐみ成分。これを効率良く取り除くことが出来るおひたしはほうれん草をおいしく食べるのに、バッチリ合う調理法なのです!
シュウ酸は水に良く溶けるので、たっぷりのお湯で茹でるとほとんどが野菜から抜けます。
おひたしを作るには野菜を茹でて、絞って、冷水につける、これらの工程でしっかりとシュウ酸を取り除けます。
軽く茹でることで、ほうれん草のきれいな深緑色の葉の色も際立ち、茎のシャキシャキとした食感も残したまま、薄味の上品なだしがほうれん草にしみ込んだ味わいは、おひたしがほうれん草をおいしく食べるために考えられたのでは?と疑ってなりません!それほど良く合うのです。
もちろん、ほうれん草のおひたし以外にもたくさんのおひたしがあります。
作り方は同じですが、いくつかを紹介しますと、
・小松菜のおひたし
画像:やまでら くみこ のレシピ
こちらも定番のおひたしです。あおあおとした綺麗な小松菜の色合いと、繊維の多いしゃきしゃきとした食感を楽しむ事が出来ます。
ほうれん草には、アクが多く含まれている為しっかりと茹でてアクを流す必要がありますが、
小松菜は比較的アクが少ないので、茹でずにレンジでチンをしてもえぐみが出にくいので、
お手軽に調理がしやすいのも特徴です。
・菜の花のおひたし
画像;週末の作り置きレシピ
こちらも比較的定番の、菜の花のおひたしです。
少しほろにがい菜の花を、うすくち醤油と出汁を合わせた出汁醤油に浸して、
そこにカラシを少し入れる事で、ピリッと味にアクセントが付いて、
少し大人な味の美味しいおひたしになります。
・しめじのおひたし
画像:kurashiru
秋の味覚の代表格であるしめじもおひたしにして食べることが出来ます。
しめじ単体というよりも、他の野菜と併せて作られる事が多く、
その歯ごたえのある食感や、独特の風味が他の野菜を引立てたり、新しい味わいを産み出したりします。
しめじは比較的安価なので、お手軽に料理に使いやすいのも嬉しいです。
これらの他にも、春菊、つるむらさき、白菜、キャベツ、オクラ、三つ葉やモロヘイヤなど、
おひたしに合う野菜は挙げたらキリが無い程たくさんあります。
定番の野菜でなくとも好きな野菜を茹でて、おひたしを作ってみたら新しい発見があるかもしれませんよ!
4.簡単でおいしい!ほうれん草のおひたしを作ってみよう
今回は、自宅で簡単に作れるほうれん草のおひたしをご紹介します!
使う材料はこちら
ほうれん草 一束
昆布 15g程
鰹節 30g程
水 1000cc
濃口醤油 大さじ一杯
みりん 大さじ一杯
筆者の家庭では普段から濃口醤油を使っていますので、濃口醤油を使用しましたが、
色を薄くしたい場合や、薄口醤油が好きな方は、代わりに薄口醤油を使用してください。
4-1.おいしいほうれん草は色で選ぶ!
ほうれん草を選ぶ時に特に注目したいのは色です!
葉っぱの色は裏表ともに、濃い緑色のきれいなものを選びましょう。
葉肉に厚みがあり、中央の葉脈から左右に均等な形で葉っぱが広がっている物を選びましょう。
傷や黒ずみが目立つものは避けましょう。
葉っぱの色以外に見るべき色は根っこの色です。
根っこは白色ではなく、赤いものを選びましょう。
根っこが赤いほうれん草は新鮮な証拠です!
また茎は、細すぎず太すぎず適度な太さのものを選びましょう。
細すぎると、成長が悪く葉もほそく旨味が少ないです。
太すぎると、成長のし過ぎで、葉が固くなります。
4-2.出汁を用意する
今回は自分で出汁を作ってみましょう!
4-2-1.鍋に1000ccの水を入れる
お鍋をひとつ用意しまして、そちらに1000ccのお水を張ります。
1000ccはカップ5杯分のお水です。
4-2-2.昆布の表面の汚れをとる
出汁に異物が入ってしまわないように、固く絞った布巾で、昆布の表面としわの内部の汚れをしっかりと拭き取ります。
4-2-3.水に昆布を入れて10分放置。旨みを引き出す。
火はまだ点けないで、10分程昆布を水に入れておきます。10分経ったら、火を点けて弱火でじっくりと煮ます。
4-2-4.弱火でじっくり沸騰寸前まで、煮る。
弱火で煮て数分経つと、昆布が水を吸って大きく広がり浮いてきて、鍋底に小さい泡が出来始めます。
この状態はもう少しで沸騰する寸前です。水が沸騰する前に昆布は取り出します。
沸騰までさせてしまうと、昆布からヌメリが出てきてしまうので、必ず沸騰前に取ってください。
昆布を取り出したら、一度沸騰させて昆布の臭みを飛ばしてしまいます。
4-2-5.鰹節を優しく浮かべて、一切触らずに10分待つ。
沸騰したら火を止めて、鰹節をゆっくりと鍋に入れます。
お湯にやさしく鰹節を広げたら、一切触らずに10分程待ちます。
この時お箸でかき混ぜたりすると、雑味が出るのでやめましょう。
10分程置いておけば、自然と鰹節の出汁が出ています!
4-2-6.軽く濡らした、ガーゼやキッチンペーパーでこす
軽く濡らしたガーゼまたは、キッチンペーパーと布巾を使って、だしを濾します。
この時、もったいないと思っても、布巾を絞ってはいけません。やはり雑味が出てしまいます。
これでベースとなる鰹と昆布の合わせ出汁は完成です。
作っただしに今度は、醤油とみりんを加えますが、混ぜる前に一手間掛けます。
みりんのアルコール成分を加熱して飛ばす「煮切り」という作業を行います。
アルコールの匂いは料理の風味を損なってしまうので、この煮切りという作業をするのですが、
みりんを入れた後に加熱をしないおひたしでは、事前にこの煮切りをすることが大切です。
煮切りの作業は通常お鍋にみりんを入れて火に掛けるのですが、今回は極少量のみの使用ですので、
簡単に、耐熱性のマグカップにみりんを使用する分より少し多めに入れて、ラップはしないで、
レンジで1分程温めます。これでアルコール分を飛ばせます。
煮切りが済んだら、先程作っただしをカップ一杯100cc程と、醤油とみりんそれぞれ大さじ一杯を
混ぜ合わせます。これで出汁が完成です。
4-3.ほうれん草は茎からお鍋でサッと茹でる
最初にほうれん草を根本の方を重点的に丁寧に洗います。
根元に付いている泥には細菌が多くいるので、特に注意して全て洗い流しましょう!
ほうれん草を洗っている間に大きめの鍋にお水をたっぷりと入れて沸騰させます。
お湯がわいたらほうれん草を茹でるのですが、
ここでのポイントは短い時間でサッと茹でる事です。目安は1分程です。
長く茹ですぎると野菜の色味が落ちてしまい、栄養や旨味もお湯に多く溶けてしまいます。
また短く茹でれば、茎のシャキシャキ感も残って、食感も楽しめます。
1分が目安ですが、多少のシュウ酸が残った方が、ほうれん草本来の味がもっと堪能出来ますので、
ほうれん草の本来の苦味が好きだ!という方はもっと茹で時間を短くしてもかまいません。
お好みでどうぞ!
ほうれん草を茹でる時は、固い茎から先に30秒程茹でます
茎だけを30秒程茹でたら、お湯に浸して全体を30秒程茹でます。
合計で1分程茹でましたら十分ですので、火を止めてすぐにほうれん草を取り出して、
氷を入れた冷水にさらします。
ここで氷水に入れる理由は、余熱でほうれん草の色味が落ちるのを防ぐ為です。
4-4.出汁に浸す時は、重ねずに並べて満遍なく浸す
冷水に浸けて粗熱をとったほうれん草は、軽く絞ってからまとめて切ります。
切る大きさは一口サイズの4~5㎝程の大きさにしましょう。
切り分けたらもう一度ギュッと絞って水気をよく切ります。こうする事で余分な水分が抜けて、
味がしみ込みやすくなります。
よく絞ったら、ほうれん草を底が平らで広いボウルなどに、だしを広げた所に、重ねずに置きます。
重ねずに並べて、全てのほうれん草が満遍なくだしに浸るようにしてください。
そうすれば、味がしっかりと全体になじみます。だしはほうれん草が半分浸る程のカサで大丈夫です。
ほうれん草をだしに浸したら、冷蔵庫で1時間程寝かせて、しっかりと味をしみ込ませます。
4-5.盛り付ける
冷蔵庫で1時間程寝かしたら、取り出して小鉢などに移し換えます。
そして上から浸していたお出汁もたっぷりかけましょう。
これだけでも、上品な味がついたおひたしは出来上がっていますが、
やはり、より風味と香りを楽しむ為に、上に鰹節をまぶして完成させましょう!
鰹節を掛けることで見た目も華やかになり、風味、香りともに一段と良くなります。
サッと短い時間で茹でたので、しんなりした葉に、少し歯ごたえのある茎の食感がアクセントとなり、食感も楽しめる仕上がりになっています。
味付けはシンプルなだしと鰹節だけを使用しているので、上品な味となっています。
とてもおいしいので、是非皆様も作ってみてください!
詳しいほうれん草のおひたしの作り方が知りたい方はコチラ!
5.まとめ
おひたしは「浸し物」と呼ばれる料理がルーツで、現在のような形式は明治時代以降に発展しました。
素揚げした野菜を浸す「揚げびたし」や、だしと野菜を一緒に煮る「煮浸し」もおひたしの仲間です。
おひたしには多種多様な野菜が使われますが、その出汁には「鰹と昆布の合わせだし」をベースにして、
醤油とみりんを8:1:1の比率で混ぜた出汁を使用します。
醤油は色を薄くきれいに見せたい場合は薄口醤油を使い、
醤油の風味を強く出したい場合は濃口醤油を使いますが、
普段使いのお好みの醤油を使用していただいてかまいません。
春野菜には、その苦みを抑える為にカラシ等を入れて味付けするのが合っています。
秋野菜には、お砂糖を少し入れて甘みを付けても合います。
鰹節を上にかけることで、見栄えも良くなり、おひたしの味を邪魔せずに風味や香りを足すことが出来るので、ぜひかけましょう。
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