レシピ本に「ほうれん草を湯がいてください」と書いてあったら、あなたはどうしますか。
ほうれん草を3分も5分も熱湯の中に入れて加熱すると、食材が期待していた状態と全く違う状態になってしまうことがあります。言葉の意味をきちんと理解して料理して、せっかくの食材を活かして美味しく食べたいですよね。
この記事では、「湯がく」「茹でる」「湯通し」「煮る」、4つの似た言葉の違いを分かりやすく解説します。特に混同しやすい「湯がく」と「茹でる」の違いは特に注意しながらお読みになると、料理するうえで、「こんなはずじゃなかった」ということを防ぐことができますよ。ぜひ参考にしてください。
目次
1. 「湯がく」「茹でる」「湯通し」「煮る」の違い
この4つの言葉の違いは、行動としては、食材を熱湯で加熱する時間の長さと、お湯のみか調味料を加えているか、の2点、もう一つは加熱時間の違いの理由と言える、何のためにするのか目的の違い、合わせて3点です。
初めに、この3点の違いをまとめた一覧表をご覧ください。
熱湯に入れて加熱する時間 | 調味料の有無 | 目的 | |
湯がく | 湯通しに次いで2番目に短い。 1分以内が目安。 | 無し。 | 野菜の場合は主に灰汁抜きのためにする。 茹で麺の場合は主に麺をほぐすためにする。 |
茹でる | 湯がくよりも長い。 時間は食材によって様々で数分から1時間以上茹でるものもある。 | 無し。 | 食材の状態を変えるためにする。 |
湯通し | 1番短い。 30秒以内が目安。熱湯の中に入れるというより、くぐらせるという感覚。 | 無し。 | 食材の臭みや油気を抜く。あるいは鮮やかな色を保つためにする。 |
煮る | 長い。 時間は食材によって様々で数分から数時間じっくり煮込むものまである。 | 有り。味噌や醤油などで味を付けながら加熱する。 | 食材の状態を変えるためにする。 |
*「湯がく」は野菜など植物性食材に対して使うことが多い言葉、それ以外の3つは植物性、動物性のどちらにも使う言葉です。
1-1 湯がく(目安1分以内)
野菜などに対して使う場合も、それ以外の場合もいずれも、熱湯の中に入れて加熱する時間は1分以内が目安です。
1-1-1 野菜などに対して使う場合
理由は、「湯がく」目的が食材の状態を変えることではなくて、主に灰汁抜きのためにするからです。
例えば、ほうれん草が代表的で、他には春菊など葉物野菜に含まれる灰汁の原因シュウ酸は水溶性で1分も熱湯で加熱すれば溶け出します。それ以上の加熱は食材を必要以上に柔らかくしすぎる原因になります。
ほうれん草のおひたしを作るレシピに、「ほうれん草をかるく湯がいてください。」と書いてあったとします。
スーパーで買ってきたままの何も手を加えていないほうれん草の1株です。
ほうれん草を熱湯で加熱した時間、右から50秒、2分、5分のものです。1番左の5分加熱したものは、見た目でも柔らかくなりすぎなのが感じられますが、口に入れてみると、「どろどろ」に近い食感で、シャキシャキした歯ごたえは完全に失われています。
これでは、美味しいおひたしになりません。
上の例では、わざと具体的に書かれていないレシピを挙げてみました。
今のレシピ本は「○○分茹ででください」など、具体的な時間も表示してくれてあるものが多いです。「30秒茹でてください」と書いてあれば、茹でると湯がくの違いなど気にしないで、30秒後に湯から出せば良いのです。しかし、問題は「かるく湯がいてください。」とか「さっと湯がいてください。」などと書かれたレシピ本を見ていた場合です。この場合「湯がく」の意味を知っているかが、料理を失敗しないための大きな要因になります。「かるく湯がいてください。」と書いてあったら、1分以内で湯から出してください。
尚、おひたしにする場合はもちろん、味噌汁の具材にするためにこの後「煮る」としても、「湯がく」ために使ったお湯はシュウ酸が溶け出していますので、そのお湯は使わずに捨ててくださいね。
*灰汁抜きの方法は食材によって異なります。
詳しくはこちらから
https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/harshness-and-lye
1-1-2 野菜以外に対して使う場合
「湯がく」は野菜に対して使われることが多い言葉ですが、その他に麵類に対しても使われることがあります。麵類と言ってもこの場合乾麺ではなく、あらかじめ調理済みの状態で売られている「茹で麵」に対してですね。
この茹でうどんや茹でそばを「湯がく」理由は、くっついている麵をほぐすとか、温め直すのが目的だからです。だから1分以内で充分なのですね。
1-2 茹でる(数分から1時間以上まで)
熱湯の中に入れて加熱する時間は「湯がく」よりも長いです。
理由は「茹でる」目的が食材の状態を変えることだからです。
例えば、乾麺の状態のうどんを、つるつる食べられる状態に変えるとか、生卵を茹で卵に変えるなどです。だから食材にきちんと火を通す必要があり、熱湯の中に入れて加熱する時間は「湯がく」よりも長いのです。
上に挙げた例でもお分かりのように、様々な食材がありますから、「茹でる」とは何分熱湯に入れて加熱することだ?という問いには、食材によって様々なので数分から場合によっては1時間以上のものもあります。
うどんやそばであれば、袋の裏面に記載された時間を守るのが1番良いです。そのうえで固めとか柔らかめとかの好みを加味して、最適な時間を見つけていくのが良いでしょう。
袋の裏面に推奨の茹で時間が記載されています。
この記事で紹介する4つの言葉の中で、最も混同しやすいのが、この「茹でる」と1-1の「湯がく」です。
「湯がく」は熱湯の中に入れて加熱する時間はざっくり1分以内、「茹でる」はそれ以上のものと覚えておいてください。
ちなみに「うでる」は「茹でる」と同じ意味の言葉です。
1-3 湯通し(目安30秒以内)
熱湯に入れて加熱する時間は30秒以内と考えてください。
「湯がく」より短時間、4つの言葉の中で1番短い時間です。熱湯に入れるというよりも、くぐらせる、という感覚ですね。
また、熱湯の中に入れるのではなく、かけることを「湯通し」と言うこともあります。
目的は「湯がく」に近いです。食材の臭みや油気を抜く、あるいは鮮やかな色を保つためにします。
ほぼ同じ意味の言葉に「湯引き」があります。また、魚や肉など動物性食材に使うときは「霜降りにする」と言うこともあります。
1-4 煮る(数分から数時間まで)
これまでの3つとの違いは、調味料を加えている点です。
お湯の中に入れて加熱することを「茹でる」と言います。お湯の中に調味料が加えられていると「煮る」と言います。
分かりやすい例では、お湯を使うと「うどんを茹でる」と言います。
これが味噌を加えると「味噌煮込みうどん」と呼ばれます。「味噌茹でうどん」とは言いませんね。
加熱する時間の長さは「茹でる」と同様、食材によって様々なのに加えて、味をしみ込ませる目的もあるので数分から数時間じっくり煮込むものまであります。
2. まとめ
以上4つの言葉の違いをお伝えしてきました。
この中で、ご自分で料理する時に特に注意して実践していただきたいのは、「湯がく」と「茹でる」の違いです。この記事を読んでいただいた方はもう「かるく湯がいてください。」と書いてあるレシピを見て、2,3分茹でてしまい食材をふにゃふにゃにしてしまうことはないはずです。
ぜひ、食材を活かした美味しい料理を作って、そして召し上がってくださいね。
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