「煎り酒(いりざけ)」をご存じですか?
煎り酒は日本酒、梅干し鰹節などを煮詰めて作った調味料のことです。
刺身や魚料理との相性が良く室町時代から江戸時代にかけて使われていました。
最近では、スローフードブームや和食ブームに伴いメディアに取り上げられ、
料理好きな人から密かに注目を集めています。
これは、煎り酒が和食のみならず、洋食や中華料理にも使うことが出来る万能調味料であるということ。
そして、醤油と比べると、塩分量が少なく、減塩が可能であるといった効果があるからです。
煎り酒は程よい酸味と塩味により、素材の味を引き立てることのできる調味料で、
醤油が庶民の生活に浸透する以前の室町時代から江戸時代に使われていました。
醤油と比べると保存性が悪く、醤油の登場により徐々に姿を消していきます。
ここではこの「煎り酒」について、どういったものなのか、煎り酒の作り方、
そして煎り酒を使ったおすすめのレシピを紹介していきます。
目次
1.煎り酒とは
1-1 煎り酒について
煎り酒は日本酒に梅干しや鰹節を入れて煮詰めたものです。
この組み合わせが基本ではありますが、昆布や米を入れて煎り酒をつくる場合もあります。
昆布を入れることで、昆布に含まれているグルタミン酸、そして鰹節に含まれているイノシン酸の組み合わせによるうま味の相乗効果によりうま味をより強く感じることが出来ます。
また、米を入れることにより、煎り酒に甘みを持たせることができます。
煎り酒は日本料理の基礎が築かれた室町時代後半から江戸時代にかけて使われていた調味料です。
当時、醤油は高価なものであり、庶民の生活には縁がありませんでした。
この醤油の役割を果たしていた調味料が煎り酒なのです。
この煎り酒は江戸時代後半に、醤油が庶民にも流通するようになり、煎り酒は姿を消してしまいます。
しかし最近、スローフードのブームに伴いこの煎り酒が再び注目を集めています。
煎り酒は程よい酸味と塩味により食材の味をより引き立たせることができます。
刺身によく合う煎り酒ですが、焼き魚に使うこともできます。
煮物や炒め物などの和食だけに限らず、パスタやカルパッチョといった洋食や、
唐揚げの下味をつける際に煎り酒を使用するなど幅広いレシピが考案されています。
レシピについては第7章で紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
また、煎り酒を使ってオリジナルのレシピを作ることが煎り酒を使う1つの楽しみといえるのかもしれません。
1-2 煎り酒の体に優しい2つの効果
煎り酒を使うことで得ることの効果は2つあります。
1つ目は減塩効果。2つ目は疲労回復効果です。
これは、鰹節から得られる「イノシン酸」と梅干しに含まれる「クエン酸」によるものです。
煎り酒には、幅広い料理に応用できるだけでなく、このような体に優しい効果があるのです。
ここでは、この2つの効果について紹介をしていきます。
①うま味成分による減塩効果
鰹節から得られるうま味成分「イノシン酸」により、煎り酒は食塩の量が少ないのに、美味しく感じることができます。
一般的な濃口醤油、減塩濃口醤油、薄口醤油、減塩薄口醤油そして煎り酒の100ml中の食塩相当量を表にして並べました
表の通り、煎り酒は濃口醤油や薄口醤油と比較すると半分以下の食塩量ということが分かります。
また、減塩醤油と比較しても、煎り酒の方が食塩の量が少ないことがわかります。
このように、醤油の代わりに煎り酒を使用することで効果的に減塩をすることができます。
食塩の量が醤油と比較して少ないこの煎り酒を美味しく感じる理由は、
鰹節を使用することによって出汁をとることができるからです。
鰹節からとった出汁はうま味成分である「イノシン酸」を豊富に含んでいます。
このうま味成分があることによって塩分が少なくても美味しく感じることができるのです。
②疲労回復効果
煎り酒に疲労回復効果があるといわれるのは、材料の中に梅干しが含まれているからです。
梅干しには、「クエン酸」が豊富に含まれています。このクエン酸には、疲労の原因となる乳酸をエネルギーに変える働きがあります。
また、このクエン酸には、ミネラルの吸収を助ける、新陳代謝を活発にする、活性酸素を攻撃する抗酸化物質の働きを助けるといった体に良い働きをします。
2. 煎り酒の素材の選び方
煎り酒の基本的なレシピは日本酒、梅干し、鰹節です。
ここでは、これらの素材の選び方について紹介します。
2-1. 日本酒
日本酒についてですが、どれを選んで頂いても大丈夫です。
純米酒や本醸造酒など色々ありますが、スーパーで手に入るものを使用してください。
2-2. 梅干し
次に梅干しについてです。梅干しについては、甘い梅干しと塩辛い梅干しがありますが、
塩辛い梅干しを使うことをお勧めします。
理由としては、煎り酒が使われていた時代では、甘い梅干しは使用されておらず、煎り酒を造る際は
塩辛い梅干しが使われていた為です。
2-3. 鰹節
最後に鰹節についてです。
鰹節は厚削り、薄削りどちらを選んで頂いても大丈夫です。
一般的な出汁の特徴としては、薄削りは、香りが良いもの。
厚削りは、香りよりも鰹節の味を強く感じる出汁が取れます。
お好みで削り節を選んで頂いて、オリジナルの煎り酒を作ってみるというのも良いかもしれません。
3. 煎り酒の作り方
3-1. 用意するもの
※2合=360ml
この分量で180mlほどの煎り酒ができます。
3-2. 作り方
①梅干しを種と実に分ける
②日本酒と梅干しの実だけを鍋に入れて、煮立たせる
③煮立ったら、弱火にして鰹節を入れる
④半分くらいまで煮詰まったら火を止める
⑤ザルで濾して完成
4. 日本酒、梅干し、鰹節、昆布で作る煎り酒
3章で紹介したレシピを元に、昆布を入れた煎り酒の作り方を紹介します。
昆布を入れることで、昆布の「グルタミン酸」そして鰹節の「イノシン酸」の組み合わせから、うま味の相乗効果が得ることができ、うま味をより強く感じることが出来ます。
この昆布を使用した煎り酒が一番おいしいと感じました。
4-1. 用意するもの
4-2. 作り方
①日本酒を鍋に入れ、その中に昆布を浸す(1時間以上)
②鍋を火にかけ沸騰直前に昆布を取り出す。
③梅干しの実だけを入れ、沸騰させる。
④沸騰したら、火を弱火にして鰹節を入れる。
⑤半分くらいまで煮詰まったら火を止める
⑥ザルで濾して完成
5. 酒、梅干し、鰹節、米で作る煎り酒
3章で紹介したレシピを元に、米を炒ったものを加えた煎り酒の作り方を紹介します。
米を入れることにより、本来の酸味を和らげることができ、まろやかな甘みを加えることが出来ます。
甘酒のような甘みのある味わいが特徴的です。
5-1.用意するもの
5-2. 作り方
①鍋に米を入れ、中火できつね色になるまで炒る
②米がきつね色になったら、日本酒を加え、沸騰直前まで煮立てる
③火を弱火にして、鰹節を入れる
④半分くらいになるまで煮詰める
⑤ザルで濾す
⑥濾したものに梅干しの実だけを入れ、再び弱火で2~3分程煮る
⑦梅干しを取り出したら完成
6. 保存方法
保存方法は、冷蔵庫保存で2週間以内に使い切るようにしてください。
保存料等が入っておらず、時間と共に風味も落ちてしまう為、なるべく早く使い切ってください。
ドレッシングボトル等に入れて保存しておくと、使用したい量を簡単に調節することができるのでお勧めです。
7. 煎り酒を使ったレシピ
7-1. 煎り酒と相性の良い料理
ここでは、煎り酒を使った料理を紹介します。和食にしか合わないように感じる方もいるかと思いますが、
洋食や中華にも合わせることができ、ご家庭でも様々な料理に応用することができます。
是非、ご家庭でも煎り酒を使った料理に挑戦してみてください。
7-2. 煎り酒を使った卵焼き
玉子焼きを作るときは、出汁や醤油、味りん等を加えて作ることが普通ですが、
鰹節のうま味成分などが含まれている煎り酒を使用すれば、これだけで、美味しい卵焼きを作ることが出来ます。
一見、煎り酒だけで美味しくできるのか?と思う方もいるかと思いますが、この煎り酒だけでしっかりとした、味付けができます。
今回紹介する卵焼きは、煎り酒の美味しさをシンプルに感じることができ、煎り酒を使って料理をする際、
ぜひ、試していただきたい一品です。
7-3. 用意するもの
使用する煎り酒は2章でお伝えした3種類のうちどれを使用しても構いませんが
日本酒、梅干し、鰹節、昆布で作る煎り酒 がお勧めです。
甘めの卵焼きが好きな方は、米を使った煎り酒を使って作ってみても美味しいです。
7-4. 作り方
①卵、煎り酒を分量通りに入れ、混ぜる
②フライパンを中火で火にかけ、油をまんべんなく敷く
③溶いた卵を、1/3入れ、全体に広げ、奥から手前へ、箸でつかみながら巻いていく
④巻いたものを奥に滑らせ手前に油を敷く
⑤また、1/3、卵を入れ、③を行う
⑥残りも卵も③.④を行い、完成
8.まとめ
煎り酒はご家庭にあるもので簡単に作ることが可能です。さらに、その用途は、和食のみに限らず幅広い料理に応用することが出来ます。
減塩効果や疲労回復効果もあり、体に優しいこの煎り酒をご家庭でもぜひ、活用してみてください。
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