和食の基本的な調理法の一つである煮物。
様々な種類がありますが、お魚やじゃがいも、かぼちゃなどを煮込んだ時に、
魚の身がボロボロと崩れてしまう…。じゃがいもやかぼちゃがドロドロに溶けてしまった…。
いわゆる「煮崩れ」に悩んだことはありませんか。
料理は美味しい事はもちろん大切ですが、見栄えも気にしたいものです。
そこで本記事では、誰でも簡単にすぐ実践できる
煮崩れを防ぐ5つのポイントを解説します。
5つのポイントを少し気を付けるだけで、出来栄えがまるっきり変わるので
この記事を読んだら、ぜひ実践をしてみてください。
目次
1.煮崩れを防ぐ5つのポイント
ちょっとした工夫で煮崩れは防ぐ事が出来ます。
下準備から順番に5つに分けてポイントをお伝えします。
1-1.面取りや飾り包丁の下処理をおこなう
まずは調理を開始する前に食材に工夫をしましょう。
煮魚の場合は、皮の面に包丁を使って×の形(一文字でも構いません)で
いわゆる「飾り包丁」を入れてください。
火を通すと皮は縮みますが、その時に身の部分が一緒に引っ張られる事で
身がボロボロになり煮崩れしてしまいます。
飾り包丁を入れる事で、皮に引っ張られる影響を少なくする事が出来ます。
また副次的な効果として、味が染み渡りやすくなります。
根菜類やじゃがいも等の煮崩れしやすい野菜は、一口サイズに切った後に
断面の端を斜めに包丁を入れて切り落とす
いわゆる「面取り」をしてください。
面取りをする事で、野菜が他の具材や鍋に当たった時に衝撃を受ける面が大きくなる事で
力が分散して壊れにくくなったり、火の入り方が一定になる事で崩れにくくなったりと、
煮崩れを防ぐ効果が期待出来ます。
より詳しく面取りのやり方や効果を知りたいという方はこちらの記事をご覧になってください。
野菜の煮崩れを防ぐ面取りとは?明日から使える料理の基礎を解説!
1-2.丁度良いサイズの鍋を使用する
包丁を使った食材の下処理が終わったら、料理をしていきますが、
煮物を作る時は、お鍋のサイズに気を使ってください。
煮崩れを起こしてしまう原因は様々ありますが、熱をかけると
煮汁がグラグラと動き、それに合わせて具材が揺れ動く事によって
具材同士がぶつかり合ったり、鍋の壁面にぶつかったりする事で煮崩れが起きます。
鍋が具材に対して大きすぎると、揺れ動きやすくなります。
反対に具材に対して小さすぎると、具材が重なり合って衝突が多くなります。
1-3.煮汁は少なめで落し蓋を活用する
さきほど煮崩れの原因として、具材が揺れ動いてぶつかる事をあげました。
そして煮汁を多くしすぎると、熱をかけた時にグラグラと沸き立って、
具材を大きく動かしやすくなり、煮崩れをしやすくなります。
なので煮汁は極力少なくする事で、煮崩れするリスクを減らせます。
好みや具材の種類にもよりますが、少し浸る程度で具材に対して1/4くらいの嵩でも
十分に味が染み込むのでオススメです。
また、かならず「落し蓋」を使用してください。
落し蓋をする事で具材が押さえつけられて、煮崩れをしにくくなる効果もありますが、
蓋がある事によって、蒸発した煮汁が蓋を伝って具材の上にかかる「対流」が起きるので
具材にまんべんなく味がつくようになります。なので煮汁は少量でも構わないのです。
1-4.本みりんを使用する
ここまで3つのポイントは物理的な事に着目をしていましたが、
残り2つのポイントは化学的な観点から煮崩れを防ぎたいと思います。
まずポイントとして、「本みりん」を使用すると煮崩れを防ぎやすくなります。
本みりんは14%程度がアルコールから出来ていますが、このアルコールに
タンパク質の凝固を促進させる効果があります。
煮魚の場合は、本みりんを入れる事でタンパク質が凝固=身が締まるので
煮崩れをしにくくなります。
一方でじゃがいも等の野菜は細胞のまわりを細胞壁と呼ばれる組織で覆われており、
強固に結びついております。
細胞壁はセルロースやペクチン、ヘミセルロースといった多糖類で形成されており、
これらの成分は一般的に「食物繊維」と呼ばれております。
それらの中でも「ペクチン」は細胞壁の間を埋めて接着剤の様な役割を果たしておりますが、
加熱によって分解されます。
ペクチンが分解されると、植物の細胞壁を繋ぎ留められず、組織が軟化します。
結果として煮崩れが起こってしまいます。
ペクチンの分解を緩和する方法として、本みりんを使う事があげられます。
この場合の本みりんの役割は「pH調整」です。
pHとは簡単に言うと水の性質を表すもので、0~14までの15段階で
中間の7が中性、7より数字が小さいと酸性、7より数字が大きいと塩基性を示します。
話をpH調整に戻しますと、pHが3以下の状態で野菜を加熱すると
「加水分解」という反応が起きて、ペクチンが積極的に分解されます。
反対にpHが5以上の状態で野菜を加熱しても、
今度は「β-脱離」という反応が起きてペクチンが分解されていきます。
これら反応が起こる中間のpH4付近では、どちらの反応も起こりにくいのですが、
本みりんを加えると、pH4に近くなる為、ペクチン分解が抑えられ煮崩れ防止に役立ちます。
1-5.火加減に気を付ける
煮魚に関しては、ポイントの3つ目で解説した「煮汁を少なくする」理由と同じく
あまり強火でグツグツと煮込まない、というのが煮崩れ防止のポイントになります。
グツグツ煮立った状態では、魚が大きく揺り動かされて、身が崩れる原因になります。
落し蓋をして中火でなるべく静かに短く…という心掛けが大切です。
じゃがいも等は常温(水)の状態から煮ていきましょう。
本みりんを使う理由で取り上げていた「ペクチン」に関係する話で
「ペクチンメチルエステラーゼ(以降はPME)」という物質が関わってきます。
PMEはその名の通り、ペクチンの分解に関与する酵素の一種です。
50℃~70℃程度の温度で活性化し、ペクチンに作用する事で、ペクチンが分解されにくくなる
→細胞壁の構造が壊れにくくなり、煮崩れしなくなる。
という効果が望めます。
80℃以上の高温になってくると、酵素もタンパク質の一種であり熱に弱く
PME自体が破壊され失活してしまいます。
なので50℃~70℃程度の温度帯でしばらく煮込むと
煮崩れを防ぐ事が期待出来ます。
2.まとめ
煮崩れを防ぐ為のポイントは5つです。
ポイント1.面取りや飾り包丁で下処理する
ポイント2.丁度良い鍋のサイズで煮る
ポイント3.煮汁は少なめ、落し蓋を使う
ポイント4.本みりんを使う
ポイント5.火加減に注意する
以上の5つのポイントをおさえれば、煮崩れをする可能性をかなり低くできます。
簡単に出来る事ばかりなので、ぜひ試してみてください。
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